保守派大弾圧が始まる!韓国検事総長・尹錫悦の正体|邊熙宰

保守派大弾圧が始まる!韓国検事総長・尹錫悦の正体|邊熙宰

曺国(チョグク)を巡る一連の事件は、一貫して曺国長官・文在寅政権VS尹錫悦(ユンソクヨル)検事総長の対決構図で報じられ続け、曺国を辞任に追い込んだことで今や尹総長に対して韓国の保守派からも支持する声が上がっている。しかし彼は保守派が期待するような男では決してない。文在寅と同じ穴の狢、いや文在寅の飼い犬に過ぎないのだ。いま文在寅は尹検事総長らを用いて韓国を徹底して破滅に導こうとしている――。尹錫悦の正体を見誤ってはならない。


遅咲きの検事

2019年10月14日午後2時、曺国(チョグク)法務部長官が電撃辞任した。その日、曺国長官の夫人、情景芯(チョンギョンシム)は検察の調査を受けており、翌日には国会の法務部国政監査が予定されていた。

この間、曺国の家族を中心に、不正入学、財団不正、ファンド運用不正など、広範囲な犯罪疑惑が止まることを知らず、世論の動向を受けて、検察もさすがに捜査を開始するよりほかなかった。しかし、検察の捜査意図は曺国の夫人と弟を拘束する程度で、むしろ国に免罪符を与えようとしていた、と筆者は推測する。

曺国を巡る一連の事件は、表面的には尹錫悦(ユンソクヨル)検事総長と曺国長官の対決、すなわち検察が自らの指揮官である法務部長官を捜査するという構図だった。

そのため、激烈な文在寅支持勢力や民主労総など左翼団体らは結束して、「検察の捜査権乱用」を強く批判、「尹錫悦と検察勢力が、今後も大統領が任命した新たな改革的法務部長官を引きずり下ろすために組織的に抗命する」と主張。

一方で、一部の保守勢力は尹錫悦を応援している。

だが、尹錫悦も曺国も文在寅が直接任命した人事であり、尹錫悦のこれまでの歩みを見たとき、任命権者である文在寅に抗命をしたことは一度もなく、いま現在、それをしているという証拠も何一つとしてない。

むしろ彼は、国の家族の様々な不正が広く国民に知られた以上、検察が適切な捜査をしなければ、文在寅政権に世論が背を向けることを憂慮していたとの見方が出ている。

尹錫悦は1960年に生まれ、ソウル大学法学部を卒業後、9年間を経て司法試験に合格、検事として赴任する。遅咲きのためか、検察を辞めたあとは法律事務所で働き、再び経歴職に採用されて検察に復帰する。大学在学中に司法試験に合格したあと、超高速で昇進するエリート検事とは全く別の道を歩んだ。

尹錫悦検事総長(右)(写真/青瓦台写真記者団)

前代未聞の政治報復、背後に文在寅

尹錫悦の名前が広く知られるようになったのは、2013年、「朴槿惠政権による国家情報院の政治コメント事件」だった。当時、朴槿惠大統領が任命した蔡東旭検事総長の下、捜査チーム長を担っていた尹錫悦は、国情院(大統領直属の情報機関)による日常的なインターネットへの書き込み作業が、すべて朴大統領の大統領選挙勝利のための工作、操作されたものだとして、追及の急先鋒に立った。

時の大統領が任命した検事総長が、すぐさま任命者である大統領を政治的危機に追い込む捜査を行った点で、今回の国捜査と比較する論調も見られるが、この事件は朴大統領の側近内で人事を巡る派閥争いが起こり、朴大統領と全く路線の異なる人物を検事総長に据えたことで生じた「人事事故」であり、今日まで国情院の書き込み工作や操作の具体的な証拠は見つかっていない。

結局、蔡東旭総長自身に婚外子問題が浮上し、彼は降板、尹錫悦も左遷され、一検事に戻った。

ところが、文在寅は朴槿惠追及の急先鋒だった尹錫悦に注目、2016年の朴槿惠弾劾を主導した国政壟断特検捜査チームのチーム長として彼を抜擢する。

この特検(特別検察官)チームは、「朴大統領の国政壟断の決定的証拠として、親文在寅放送局JTBCが提示したタブレットPCは捏造されたものだ」とする嫌疑などを一切考慮しないなど、偏向・歪曲にまみれた捜査を行った。

尹錫悦は特検捜査のホープとして、文在寅大統領によってソウル中央地検長に栄転。朴槿惠、李明博政権人士ら60余名を職権乱用と職務放棄などで次々と拘束、収監するという前代未聞の政治報復を実行した。

このような滅茶苦茶な政治報復捜査は尹錫悦が個人の力で行うことなど到底不可能であり、背後にある文在寅の力なくして成し遂げられるものではなかった。

文在寅は検察を管理する法務部幹部職(局長級以上)にも、自身の親衛隊である「民主社会のための弁護士会」所属の弁護士を据え、検察内外を掌握し、さらに親北・反日反米の裁判官集団「ウリ法研究会」を用い、法院(裁判所)までをも支配している。法院は、尹錫悦が提出する拘束令状を常に簡単に発行した。

JTBCのタブレットPC捏造疑惑を提起した筆者に対して、拘束令状を請求したのも尹錫悦のソウル中央地検であり、令状を発行したのもウリ法研究会所属の判事だった。一審で筆者に名誉毀損訴訟で初となる懲役2年の実刑判決を下した判事も、ウリ法研究会所属だ。

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朴槿恵弾劾でも主導的役割を果たしたのが尹錫悦氏だった

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文在寅と運命共同体

いま、曺国を辞任に追い込み喝采を浴びている尹錫悦だが、彼こそこうした文在寅の政治勢力を基盤として、政治報復の刃を振り回してきた張本人であり、文在寅と同じ穴の狢なのだ。いや、文在寅の飼い犬と言える。

実際、尹錫悦は、曺国の実弟チョ・クォンに対して学院財団運営の不正で拘束令状を請求したが、チョ・クォンは令状実質審査を放棄。これに対して、法院は「犯行を自白したため逃走する恐れがない」などと、通常では考えられない理由で令状を棄却した。過去3年、令状実質審査に参加しない被告人の逮捕状が棄却されたのは初めてのことだ。

野党の鄭甲潤自由韓国党議員は、国政監査において「全体弁護士の5%にすぎない民弁(民主社会のための弁護士の会)で要職を占め、法務部と検察、司法を牛耳っている。民弁全盛時代だ」と批判した。

つまり、尹錫悦が文在寅に抗命し、曺国までをも捜査で拘束させることは事実上不可能であり、そのことは尹錫悦自身もよくわかっていたはずだ。検察と法院が文在寅に掌握されているのに、検事総長一人がどのような手で大統領と闘うというのか。

ある者は、「検事たちが自分たちの持つ利権のために団結するだろう」と主張する。しかし、検察よりさらに閉鎖的な法院さえも掌握して、梁承泰大法院長(最高裁長官)を拘束させたのが文在寅である。

主流左派メディアは「文在寅大統領と国長官は検察を改革しようとし、尹錫悦総長と検事たちはこれらを阻止しようとしている」という安易な対決構図でしか報じないが、そもそも検察を私的な政治報復手段として利用してきた文在寅政権が、検察改革にどのような関心があるというのか。

曺国捜査を主導した高亨坤ソウル中央地検特捜一部長など、尹錫悦とともに朴槿惠大統領弾劾捜査を行った検事たちも含め、「尹錫悦師団」というより、「文在寅とともに詐欺・虚偽の弾劾を主導した勢力」と見なければならない。つまり尹錫悦らは、どの道、文在寅が死ねば共倒れするよりほかない運命共同体なのである。

文在寅は、曺国を法務部長官に任命した際、曺国の周辺捜査を拡大する検察に対して「検察は自らやるべきことをしている」と支持する発言を行った一方、発言に対する親文在寅勢力の反発が激しくなると、今度は逆に「検察は人権を考える必要がある」として自身の支持層に配慮するなど、発言を巧みに変えている。

文在寅の最終目標

そもそも、なぜ文在寅が曺国を法務部長官に強硬的に任命したのか、その最終目標に対する議論も分析も韓国内では決定的に欠けている。

本来なら、曺国が民情首席秘書官として残るほうが検察の掌握、改革には有利なはずだ。なぜなら民情首席秘書官は検察のみならず、警察や国情院等の情報機関を統括、指揮することができるからである。

なのに、なぜ文在寅は曺国を法務部長官に任命したのか。任命すれば、曺国が聴聞会と検察捜査によってめった斬りにされることは誰の目にも明らかだった。そうしたことを甘受してまで成し遂げなければならない切迫した「任務」があったのだ。それこそが文在寅の真の狙いなのである。

10月5日、瑞草洞で行われた文在寅と曺国を支持する「曺国長官守護・検察糾弾集会」には、主体思想派運動路線の学生運動団体「全国大学生代表者協議会」の後身である「韓国大学生進歩連合」が参加した。この団体は昨年、「北朝鮮、金正恩国防委員長の韓国訪問を熱烈に歓迎する」という大キャンペーンを繰り広げたことでも知られている親北団体だ。

文在寅はいま、11月に釜山で開かれる韓国・ASEAN特別首脳会議に、金正恩を招請するため総力をあげている。一方、金正恩もアメリカとの実務会談で優位に立つためには、文在寅を積極的に利用しなければならない。そこで両者が狙うのが、金正恩の電撃的な釜山訪問である。

そのための絶対的前提条件がある。それは国家保安法の廃止だ。

国家保安法は、反国家団体の結成、加盟、破壊活動、スパイ行為などを禁止し、違反者には死刑を科すこともできる。反国家団体の支配地域 (北朝鮮) への往来禁止、反国家団体とその活動に対する称賛や支援の禁止、反国家団体員との会合や通信の禁止などが規定されている。

つまりこの法に照らせば、金正恩自体が国家保安法違反の捜査対象になり得るのだ。現に、韓国の保守派団体は「金正恩の釜山訪韓時、逮捕決死団を組織する」と公言している。

文在寅は以前から国家保安法廃止を主張しており、北朝鮮にとっても同法の廃止は金日成、金正日ら先代から引き継がれた「遺志」だ。したがって国家保安法廃止は、3代目の金正恩にとって南北連邦制統一案の先決条件(必須条件)と言える。

さらに、文在寅が昨年発表した憲法改正案の方向性も、南北連邦制に備えたものだった。

今後、文在寅政権が正式に国家保安法の廃止と連邦制統一改憲案を宣言すれば、金正恩の釜山訪韓が実現するだろう。

この国家保安法廃止と連邦制統一改憲案の正当性を扇動する最適者こそが、法全般を司る法務部長官の曺国だったのである。

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金正恩の釜山電撃訪問の可能性

曺国は1992年、蔚山大学教授時代に「南韓社会主義労働者同盟」に参加し、国家保安法違反で6カ月間収監された。曺国は公聴会の際、「私は社会主義者であり、国家保安法は廃止されるべきである」という所信を明らかにした。

曺国の辞任が政権に打撃を与えるというのが大方の見方だが、曺国が辞任しても、文在寅政権内には曺国のような左傾路線の人物は数知れない。曺国の後任の法務部長官も、国家保安法廃止と連邦制統一改憲案の正当性を国民に説き続けるだろう。しかも、曺国は法相辞任後も文在寅政権を側面支援すると見られている。

曺国の家族の犯罪行為を擁護するために、1万人、2万人という激しい支持層が路上に集まった。曺国はいまも変わらず左派陣営のスターである。その曺国を守るために集まった群衆が、「検察改革のために犠牲になった英雄・曺国が言うのであれば」と、ある瞬間を境に「韓国大学生進歩連合」のように「金正恩の訪韓歓迎、国家保安法廃止、南北連邦制統一改憲」を支持する恐れは十分にある。

いま、文在寅政権の中心人物である柳時敏廬武鉉財団理事長などを先頭に、曺国を盛んに擁護しながら、金正恩に対して「ソウルが負担ならば済州島にでも必ずお越しください」などと、金正恩訪南の雰囲気作りが積極的に行われている。

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尹錫悦の重大な「任務」

韓国国際政治の専門家は、「文在寅政権は対米、対日外交の破綻という崖っぷちに追い込まれている」と分析する。平壌に米軍核査察の専門家を受け入れなければならない立場の金正恩も、「対米外交の崖っぷちに追い込まれている」という点では同様である。

これらの危機を打破する最後の切り札が、国家保安法廃止、南北連邦制統一改憲、そして金正恩釜山訪問なのだ。そのための事前整地作業として重要な役割を担うのが尹錫悦総長であり、彼の「政界の実力者の不正をも暴く正義感に満ちた公正な」イメージが有用なのである。

なぜなら金正恩の釜山訪韓に前後して、これに反対する保守派の人士を片っ端から弾圧、粛清する公安政局を造成することが、尹錫悦のもう一つの重大な「任務」であるからだ。

今般の国の一族捜査で、尹錫悦を筆頭に検察は保守派からも支持を得ているが、その検察はあくまでも「文在寅に掌握された検察」であることを忘れてはならない。尹錫悦が保守派たちに刃を向けた時、彼らはどのように抗弁するのだろうか。

文在寅は、尹錫悦らを用いて徹底して韓国を破滅に導こうとしている。そのことに保守派すら無自覚であれば韓国に未来はない。(翻訳/黄哲秀)

著者略歴

邊熙宰(ピョン ヒジェ)

https://hanada-plus.jp/articles/215

週刊『メディアウォッチ』代表顧問。1974年、ソウル生まれ。ソウル大学校人文学部美学科卒業。米陸軍派兵韓国軍(KATUSA)出身。1999年、インターネット新聞『大字報』を創刊。2007年、日本で尹錫瑚プロデューサーとの共著『冬のソナタは終わらない。』を刊行。狂牛病虚偽騒動に憤り、2009年、週刊誌およびインターネット新聞『メディアウォッチ』を創刊。左翼志向のポータルサイト、BS・CS総合編成チャンネル、芸能企画社などの放送権力、文化権力問題を批判し、2013年からは研究真実性検証センターを設立、論文発表など学術権力の問題も告発している。

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