フランスは地政学に熱狂
前回、地経学の本を取り上げたと思ったら今回は地政学か、と思われるかもしれないがご容赦いただきたい。地政学に関しては近年、ブームと言えるほどの出版ラッシュが続いているが、それはどうやら日本のみの現象ではないようなのだ。
マルク・セモ著、内山奈緒美訳『地政学講座――世界をより広く知るための100問』(原書房)によれば、原著が刊行されたフランスでも〈毎年、「地政学」という語をタイトルに冠した書籍が何十冊も出版されている〉〈ラジオやテレビの世界でも地政学は人気を集めている〉という(10〈地政学の限界とは?〉)。
フランスの有識者による〈「このような地政学への熱狂はフランス特有のもので、ヨーロッパの他の国々や世界の地域では見られない」〉との2010年代の指摘も紹介されている。
その一方で、ご当地では〈地政学は、高校2年生および3年生の教育課程に、歴史や地理とともに組み込まれるようになっている〉そうで、なんともうらやましい限りだ。
だがその一方で「地政学」がバズワード化(流行しすぎたことによる本来の意味の曖昧化)が起きたことで〈「今では誰もが地政学をやっている、あるいはやっているつもりになっている」〉とフランスの元外務大臣が苦言を呈すまでに至っているという。
この苦言は日本にも当てはまるだろう。ブーム化したことで、何でもかんでも「地政学」を付ければそれらしく見えるという流れがあるのも事実だからだ。だからこそ、出版ラッシュの中でも「ちゃんとした地政学の本」を見極めるための一冊として、本書を紹介したい。
フランスは中朝露をどう見るか
著者のセモ氏はフランスの著名ジャーナリストで、国際情勢を専門とし、研究機関での活動も行っているという。それゆえに、「地政学」に関するしっかりとした学問的土台の上に、ジャーナリスティックな観点からの言及を載せている。しかも100問100答形式と、とても読みやすい作りになっている。
国際情勢関係の本は洋書でもアメリカからの視点のものが少なくない。だが本書はフランス目線のため、「欧州からはそう見えるのか!」「国際社会における自国の立場をフランス人はそうみているのか」と新たな発見が多いのも読みどころだ。
例えば〈59 北朝鮮が核をもつこと、それは何を変えるのか?〉という問い。日米韓にとっての懸念材料であることは間違いないのだが、フランスからは〈このならず者国家は……ますますロシアに接近している〉という点が最も懸念されていることがわかる。
またフランスにとっての中国を〈経済面では、不可欠なパートナーである一方で手強い競争相手であり、価値観や体制面ではライバルでもある。さらにはロシアにますます明確に接近していることから、敵対国にもなり得る存在だ〉(31〈敵とは何か〉)としている。やはり欧州、フランスの最大の脅威はロシアなのだ。
中露の関係についても皮肉たっぷりにこう述べている。

