【読書亡羊】地政学は戦争ための学問なのか  マルク・セモ著『地政学講座』(原書房)|梶原麻衣子

【読書亡羊】地政学は戦争ための学問なのか マルク・セモ著『地政学講座』(原書房)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


こうした決定が、例えばドイツの連邦議会や欧州の機関での妥協にゆだねられるなど、どうして想像できるだろうか?

日本では「抑止力向上名目での軍拡に反対」の声も絶えないが、フランスが時にアメリカにも苦言を呈し独自の姿勢を取ることができるのは、核抑止力を自ら持つことによって国家としての生殺与奪の権を他者にゆだねていないからこそ、なのだろう。

アメリカについてはこんな風にも語られている。

世界の多極化は、国際交流を円滑にする多国間主義とはならなかった。それどころか、多極化は新たな力関係を生み出し、その結果、アメリカ、ロシア、中国という3大大国は、勝手に法の規範を無視したり、逆に自国の利益のために利用したりするようになった。(71〈多国間主義とは何か?〉)

アメリカは中露と同じ側に入れられつつあるが、2026年のアメリカの動きを見ればさもありなんという他ない。

さらに本書では、フランスの独自性は〈アメリカの「友であり同盟国であるが、隷属国ではない」〉(60〈フランスは中堅国家の中の大国なのか?〉)という伝統にあると説明している。

NATO加盟国や核保有などあらゆる面で日仏は条件が違うが、この姿勢には学ぶべきであろう。翻って言えば、アメリカ隷属状態を嘆くのであれば、核ではなくとも自ら力を持ち、周辺の安全保障環境への責任を負う他ないのだとも言える。

国際法からAIまでカバー

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書評 読書亡羊 梶原麻衣子

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