「イランは親日国」だが…
イスラエルとアメリカによるイラン攻撃が始まってひと月が経った。
イランが対抗措置としてホルムズ海峡封鎖に乗り出したことで、当事国以外の国々にも影響が出始めている。日本も他人事ではなく、日本向けの原油タンカーの多くがホルムズ海峡を経由することから、「アメリカべったりでは燃料を失い、国民生活に多大な影響が出る」との声も上がっている。
SNSにはそしてアメリカに従うばかりの高市首相への反発や反米意識から、過剰にイランを持ち上げて見せる書き込みも散見される。
かつて、イギリスの経済制裁を受けて危機に瀕したイランに日本の出光興産が石油を買い付けに行ったという日章丸のエピソードも、これまではどちらかと言えば保守派が言及することが多かったが、反米的リベラル派も持ち出すようになっている。
アメリカとの関係があるにせよ、国民生活が立ち行かない事態になれば同盟関係も意味をなさない。となれば「幸い、イランは親日国であり交渉を受け入れる準備があるようだ」という解説が続くわけだが、そもそもイランやイスラエルについて我々はどの程度知っているのだろうか。
今回は、今すぐに手に入る関連本をまとめてご紹介したい。
アラグチ外相と日本の関係
ここへきてリベラル派の肯定的な言及が増えているのが、イランのセイエド・アッバス・アラグチ外相だ。アラグチ外相は駐日大使を務めたこともあり、『イランと日本―駐日イラン大使の回顧録2008―2011』(論創社、2024年)という著作がある。
アラグチ氏は駐日日本大使時代、自身の名前を「新久地」と表記した名刺を配っていたという。
大使時代に経験した東日本大震災では、スタッフを帰国させながらも本人は日本にとどまり、大使館も明け続けた。炊き出し支援も行うなど当時の大使としての働きぶりを知ることができる。
こうしたエピソードが「アメリカに関係性を阻まれながらも絆を深めてきた日本の友人」としてのイラン像を形成し、その後外相としてメディアにも登場するアラグチ氏への親近感を覚えさせるものであるのは確かだ。
だがこうした成果はアラグチ氏が自らの駐日大使としての成果を示すものであるとともに「読者に見せたい日・イラン関係」を綴ったものであることは忘れてはならない。
アラグチ氏は日本との関係構築に尽力していたが、それは言うまでもなくイラン自身の国益のためである。
なお本書はいわゆる「在日イラン人やくざ」的な存在についても触れている。受刑者となったイラン人は日本人受刑者と同様に刑務所に入るが、そこでの入浴はイラン人受刑者にとって大変な苦痛だという。
刑務所の風呂は大浴場形式で、プライバシーは存在しない。人前で裸になる習慣のない(むしろ屈辱にさえなる)イラン人にはこれがたまらなくつらく、しかも多くのイラン人男性にとって髭を伸ばすことはイスラムの教えに基づく習慣でもあるのだが、日本の刑務所では髭をそらなければならない。
本書には、面会に来たアラグチ氏にイラン人受刑者が入浴時の苦痛を訴える場面が書かれている。こうした異文化間の摩擦を知ることができるのも、アラグチ氏の本の魅力だ。

