【読書亡羊】地政学は戦争ための学問なのか  マルク・セモ著『地政学講座』(原書房)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


中国から見れば、ロシアはノスタルジックな幻想に浸っている過去の大国である。一方、ロシアにはソ連時代の「兄貴分」としての上から目線がいまだに残っている。(57〈中露の絆は限りなき真の友情か?〉)

なお、日本についての言及はそれほど多くないが、「日本はドイツと並んで国連の常任理事国になるべきだ」「日本が打ち出した価値観外交、インド太平洋という概念はフランスにとっても戦略上の優先事項」と述べている点は注目したい。

外交の伝統を支える核戦力

〈フランスは「必要最小限抑止」の原則に従い、300発弱の核弾頭を保有するにとどめている〉(36〈フランスの核抑止力の役割とは?〉)とあるように、核保有国であるフランスの見方に学ぶことも多い。

トランプのアメリカが欧州離れを隠そうともしない中、フランスは自国の核戦略を欧州全体のものとしてとらえる必要性が増している。

〈フランス流の広範囲をカバーする核抑止は、他のヨーロッパ諸国やNATOの同盟国を安心させるには至っていない〉としながらも、自国の核抑止力をフランス自身が完全に掌握していることの意味を重く見ているのだとわかる。

国家元首は、国の存続にかかわる利益が危機にさらされていると判断した場合、最終的には自らの決定で核兵器を使用する。「大統領の職務が神聖だとされるのは、『赤いボタン』を押す権限があるからだ。抑止力こそフランスの政治体制の中心だ」

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