復興を無視した暴論
政府の避難指示解除の基準としては20ミリシーベルトを目標として、長期的に1ミリシーベルトまで下げることを目標としています。放射線防護に関する国際基準として広く認められている考え方である年間20ミリシーベルト~100ミリシーベルトの範囲のうち、最も厳しい値の年間20ミリシーベルトを避難指示の基準として採用しました。
GPは避難区域の放射線量を「年間1ミリシーベルト」に設定した場合、避難指示解除地域では少なくとも「21世紀半ば」まで、まだ避難区域である地域では「22世紀」まで基準が達成されるのは難しい、とハンギョレ新聞の取材に答えています。
つまり、即座に年間1ミリシーベルトという数値を設定することは荒唐無稽な主張であり、双葉郡周辺の復旧・復興を無視した暴論だといえます。
こうした年間1ミリシーベルトを絶対視したGPの主張は、「浪江町の復興拠点計画を撤回」 「除染労働者保護の観点から、これらの地域での除染計画は停止」といった避難指示区域における除染計画すら否定しています。
科学的根拠に基づいての安全性という観点はもとより、福島県や福島県に住む県民の生活再建には必ずしも寄与しません。GPの身勝手な主張が、残念ながら国連人権理事会において「勧告」となり、政府はこれを受け入れてしまったのです。
平成29年10月12日、GPはスイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー(URP)事前セッションに参加しました。
日本の人権状況に関するセッションで、“自主避難者の園田光子氏”が「被曝に関して女性と子供の健康への権利が侵害されていること」や「放射能汚染が続く地域への帰還圧力の改善の必要性」を、国連人権理事会の各国政府代表者に対して訴えています。
その後、11月14日に開かれた国連人権理事会による日本の普遍的・定期的レビュー(UPR)の作業部会で、東京電力福島第一原発事故をめぐる日本政府の対応に「ドイツ、オーストリア、ポルトガル、メキシコの政府代表者」が人権侵害の「是正勧告」を行いました。
4カ国による日本に対する是正勧告内容は次のとおりです。
”自主避難者”が訴え
「福島の高放射線地域からの自主避難者に対して、住宅、金銭その他の生活援助や被災者、特に事故当時、子供だった人への定期的な健康モニタリングなどの支援提供を継続すること」(オーストリア)
「男性及び女性の両方に対して、再定住に関する意思決定プロセスへの完全かつ平等な参加を確保するために、福島第一原発事故の全ての被災者に、国内避難民に関する指導原則を適用すること」(ポルトガル)
「特に許容放射線量を年間1ミリシーベルト以下に戻し、避難者及び住民への支援を継続することによって、福島地域に住んでいる人々、特に妊婦及び児童の最高水準の心身の健康に対する権利を尊重すること」(ドイツ)
「福島原発事故の被災者及び何世代もの核兵器被害者に対して、医療サービスへのアクセスを保証すること」(メキシコ)
年が明けて、平成30年1月23日、国連人権理事会の加盟4カ国が東京電力福島第一原発事故被害者の人権状況を是正するよう日本政府に勧告したことを受け、GPは勧告を受け入れることを求めた署名3,090筆を外務省に提出しています。
その時に、外務省人権人道課主席事務官が署名を受け取り、環境省、文部科学省、復興庁の担当者も同席しました。
翌月の2月19日、衆議院予算委員会にて、立憲民主党の山崎誠衆議院議員が国連人権理事会における勧告を取り上げ、政府に対して勧告内容の前向きな検討を要望する質問を行いました。
この時の山崎議員の質問内容は不明確であり、河野外務大臣から「おっしゃっている意味がよく分からない」と一蹴されています。
そして、3月5日に国連人権理事会の勧告に対する政府の見解が公表されました。ドイツ、オーストリア、ポルトガル、メキシコの国連加盟国が政府に勧告した内容について、これらの4つの勧告を受け入れました。
なお、各国から出された全217件の勧告に対して、政府は145件を受け入れ、34件を受け入れ拒否、その他は留意等としています。
政府が「4つの勧告」を受け入れたことに歓喜したGPは、さらに活動を活発化させていきます。
昨年3月8日、GPは参議院議員会館での「国連人権理事会 普遍的・定期的レビュー(UPR)福島原発事故関連の勧告の意義とは?」と題した集会を開催しました。
GPは国連の対日人権審査で出された原発事故関連の勧告について、政府が受け入れを表明したことを「歓迎」するとともに、「勧告を受け入れるからには、ただちに実行」するよう発言しています。