「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

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「単なるデタラメと違うのは、多くの人にとって重大な関心事が実際に起きており、その原因について、一見もっともらしい『説得力』のある説明がされることである」――あの偉人たちもはまってしまった危険な誘惑の世界。その原型をたどると……。


これとそっくりな主張をする人物がドイツにも現れた。アドルフ・ヒトラー(1889~1945)である。彼は著書『わが闘争』(1925年)の中で次のように述べている。

「この民族の全存在が、どれほど間断のない嘘に基づいているかということはユダヤ人から徹底的にいやがられている『シオンの賢人の議定書』によって、非常によく示されるのだ。それは偽作であるに違いない、とくり返し『フランクフルター・ツァイトゥング』は世界に向かってうめいているが、これこそそれがほんものであるということのもっともよい証明である。多くのユダヤ人が無意識的に行うかも知れぬことが、ここでは意識的に説明されている。そして、その点が問題であるのだ。この秘密の打ち明けが、どのユダヤ人の頭から出ているかはまったくどうでもよいことである。だが、それがまさにぞっとするほどの確実さでもってユダヤ民族の本質と活動を打ち明けており、それらの内面的関連と最後の究極目標を明らかにしている、ということが決定的である。けれども、議定書に対する最上の批判は現実がやってくれる。この書の観点から最近の二百年間の歴史的発展を再吟味するものは、ユダヤ新聞のあの叫びもすぐに理解するだろう。なにしろ、この書が一度でもある民族に知れわたってしまう時は、ユダヤ人の危険はすでに摘み取られたと考えてもよいからである」 (平野一郎・将積茂 訳)。

『国際ユダヤ人』はドイツ語にも翻訳され、ワイマール期のドイツで広く読まれていた。しかも同書には、第一次世界大戦敗戦後のドイツ国民の苦境にふれて「ドイツ国民の病いは、ユダヤ人に帰すべきものが多い。鋭敏な頭脳の持ち主は、すでに数十年前からこのことを洞察していたが、いまではだれもがはっきりと了解するようになった。ドイツの政治生命は、ユダヤ人という黴菌(ばいきん)によって根本的に覆されてしまったのだ」などと、ヒトラーの反ユダヤ主義を大いに励ますことも主張されていた。ヒトラーが影響を受けたことは想像に難くない。

実際、 ヒトラーは『わが闘争』の中で、アメリカでのユダヤ人の金融支配について触れた部分で「今なお彼等(ユダヤ人)の自由にならず、彼等の怒りを買っているものはただ一人、偉大なるフォードあるのみである」とフォードを称賛している。

もっともフォードの名が明記されているのは『わが闘争』の旧版で、新版ではフォードの名が消え、「ただ一人」以下が「まったく少数しかいない」に改定されている。改定の理由は定かではないが、以下に述べる事情をヒトラーが考慮した可能性はある。

廃刊と謝罪

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