「自動車王」も「英雄」も見事にはまった“陰謀論”|松崎いたる

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「単なるデタラメと違うのは、多くの人にとって重大な関心事が実際に起きており、その原因について、一見もっともらしい『説得力』のある説明がされることである」――あの偉人たちもはまってしまった危険な誘惑の世界。その原型をたどると……。


フォードは『国際ユダヤ人』の中で「今日、議定書が世界征服綱領であることはなんら疑う余地はない」と述べている。

シオニズム会議の議事録であるというのが、表向きの説明だが、じつは『国際ユダヤ人』が出版された1920年には、議定書は会議とは何の関係もなく捏造された文書、つまり偽書であることがすでに暴露されており、ユダヤ人からも強く抗議されていた。

それにもかかわらず「議定書」は世界に広く普及することになった。それは自動車王であり富豪にもなっていたフォードの影響力によるところが大きいものがあった。

議定書は偽書であるとの非難に対して、フォードは『国際ユダヤ人』の中で次のように反論している。

「ユダヤ人は、著者を犯罪人または狂人というが、それにしては驚くべき力のある著述と言わねばならない。この書が本物であるという唯一の証拠は、そこに含まれている内容である。この内的証明力こそが、タイムズ紙も論じているように、一般の注意を引いた理由であり、ユダヤ人が全力をあげて本書から世の人びとの注意を他に振り向けようと努力する理由でもある」

「(議定書が)非ユダヤ人国家にとってもっとも関係あることは、ユダヤ人が言う『犯罪人または狂人』がだれかという点ではない。この政治綱領の作成後に、細部にわたって具体化されつつある方法と手段を、今日の人びとは目の当たりにしているという点にあるのである」(島講一 訳)

著者が不明であることは不問にして、世間が注目していることと、書いてある内容が現実に合致しているから、議定書は本物であるという主張である。しかも当事者のユダヤ人たちが非難していることこそが、その証拠になるとも言っているのだ。

フォードをまねたアドルフ・ヒトラー

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