人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国と対峙し独立を勝ち取った南モンゴル。100年におよぶ死闘から日本人が得るべき教訓とは何か。そして今年10月、日本で内モンゴル人民党100周年記念集会が開催される。


ニューヨークに拠点を置く人権団体、南モンゴル人権情報センターの代表、エンフバット・トゴチョグ氏(参照:中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ)はこう語る。

1945年以前の内モンゴル人民革命党の活動について言えば、その活動は地下に潜りましたが、組織として正式に解散したことは一度もありませんでした。 つまり、この党は依然として存在し、100年間を通じて存続していたのです。 ある時期には地下に潜伏していましたが、再び姿を現すこともありました。 ここにこそ、この組織の強靭さと決意が表れています。

1932年の満洲国建国により、南モンゴルの一部は満洲国に組み込まれることとなる。満州の地は、元々は満州人とモンゴル人が住んできた土地だ。清朝末期、清朝が政策を変更して中国人(漢民族)の移住を許可したことから、中国人の人口割合が急激に上昇していく。満洲国が掲げた「五族協和」とは、満州人・日本人・中国人(漢民族)・朝鮮人・モンゴル人の共存共栄を理想としたスローガンだが、本来的には、モンゴル人は自らの地で自らの独立を最も望んでいたことは言うまでもない。満洲国に組み込まれたことは不本意だっただろう。それでも当時の日本が、国際情勢の中で、ぎりぎりの安全保障戦略を描き、悪戦苦闘したこともまた事実だ。蒙古興安軍官学校の設立など、モンゴル人のアイデンティティと軍事力強化に日本が務めた側面もあったのだ。

1945年8月9日、日ソ中立条約を破ってソ連が満州への侵略を開始する。この時ソ連の衛星国であるモンゴル人民共和国のモンゴル軍も、ソ連軍と共に日本への攻撃に参加して侵攻してきた。日本の敗戦は必至と見た満州・南モンゴルのモンゴル人もまた、独立の好機と見て蜂起している。この時、北のモンゴルすなわちモンゴル人民共和国のモンゴル人も、南のモンゴル人たちも、等しく見ていた夢は独立であり、南北モンゴルの統一だった。

しかしこの夢は実現することはなかった。1945年2月に開かれたヤルタ会談の秘密協定により、南のモンゴルは中国側に渡すことが既に決められていたからだ。モンゴル人の意思とは関係なく、大国間によって秘密裏に線引きがなされていたのだ。ソ連の命令によりモンゴル人民共和国のモンゴル軍はモンゴルに引きあげざるを得なかった。

1949年、国共内戦が共産党の勝利で終わり、それに伴い南モンゴルは中華人民共和国の一部として組み込まれ、南モンゴルの多くの地域が内モンゴル自治区とされた。中華人民共和国の自治区としては最初に設置されたものだ。なお南モンゴルの全てが内モンゴル自治区となっているわけではない。内モンゴル自治区の外側にも本来のモンゴル人居住地域である南モンゴルは広がっていることは指摘しておかなければならない。

エンフバット・トゴチョグ氏(後列中央)2023年6月8日 参議院議員会館

内モンゴル人民革命党粛清事件

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