福山哲郎の印象操作
旧民主党時代、「偽メール事件」があったのを覚えておられる読者は多いだろう。
平成18年の通常国会で、民主党所属の衆院議員がホリエモンこと堀江貴文氏と自民党幹事長だった武部勤氏の間に不当な金銭の授受があったと追及した騒動のことだ。証拠として出したメールは偽物だったことから、追及した議員は辞職し、その後、自殺。当時の前原誠司代表ら執行部は総退陣に追い込まれた。実に深刻な「事件」だった。
立民幹部は放送法を巡る問題を「偽メール事件の反省から慎重にやっている」と話していたが、作成者不明という点で、今回の問題と偽メール事件は似ているといわざるを得ない。内部文書が流出しているという意味では、今回のほうが事態は重大と捉えることもできる。
それでも立民は何としてでも放送法の問題で政権にダメージを与えたかった。そこで福山哲郎元幹事長は偽メール事件ではなく、「森友学園」と「加計学園」を巡るいわゆる「モリカケ問題」と結びつけ、印象操作をするのであった。
少々長いが、参院予算委で福山氏が何と言ったか、紹介したい。
「総務大臣が『捏造』と言っている限り、総務省は『これらは全て正確です』と言えなくなっている。森友・加計学園(問題)も同じだったんですよ。安倍総理は『森友学園に関わっていたら辞める』と言ったことで、どれほどの官僚に迷惑が及んだのか。財務省の赤木さんは命まで落とされましたよ。佐川局長は改竄の責任を負わされましたよ。それは、官僚が正確に文章を作成していたからなんですよ。文書を公開したら安倍総理、昭恵夫人の関わりが明確になる。逆に言うと改竄せざるを得なかったんです。それぐらいこの国の公文書は丁寧に正確に作られている」
いつから立民は佐川宣寿元理財局長に同情するようになったのだろうか。この問題を追及しているときは、佐川氏が改竄を指示したとして、佐川氏を徹底的にたたいたのではなかったか。
そもそも、モリカケ問題は改竄が問題になったわけだが、放送法の問題は不正確な文書である点が問題なのである。モリカケ問題とはことの性質が違うとみるべきだ。福山氏はあたかも似たような構図であるかのように語っているが、似て非なるものであり、むしろ旧民主の偽メール事件のほうに似ている。
検察官気取りの杉尾秀哉
話を元に戻す。立民は当初、礒崎陽輔首相補佐官(当時)が総務省側と打ち合わせした内容が、そのまま平成27年5月の高市氏の答弁になっているとして、「礒崎氏が総務省と打ち合わせをしていたことを知らないはずはない」とみていた。
高市氏が礒崎氏が裏で動いていたことを知らないと言い張ると、杉尾秀哉議員は参院予算委でこう声高に語るのだった。
「高市大臣は外されていたんですよ。礒崎さんがシナリオをかいて総務省とやったんですよ。その結果で答弁そして質問があったということなんですよ。違いますか」「なぜ事前のシナリオ通りの質問と答弁だったんですか」と畳みかけた。
高市氏は「そういうことを私に聞かれてもわかりません」と答えるしかなかった。それはそうだろう。知らないのだから、答えようがない。検察官気取りもいい加減にしてもらいたい。
杉尾氏は「問題の本質は放送法の解釈が何の権限もない補佐官の圧力でゆがめられたということなんです。これが問題の本質であって磯崎さんの関与うんぬんではないです」とも語ったが、礒崎氏の関与は、すなわち政治的圧力だとして、問題視していたのではなかったのか。
もはや何を言っているのか、支離滅裂である。
杉尾氏は、総務省が行政文書の正確性について調査したことにも触れ、「総務省の現職の皆さんがどれだけこの調査に時間をかけたのか。膨大な時間をかけている。そうしたことも含めた責任を大臣は感じていないのか。大臣をお辞めください」と無理やり理由をつけて、辞職を求める始末だった。自分たちが作り上げたストーリーが崩れた瞬間だった。
礒崎氏の政治的圧力も、礒崎氏と高市氏との連携も証明できず、たどり着いたロジックは(ロジックといえるほどのものではないが)、官僚に膨大な時間をかけて調査させた責任をとって大臣辞任を、ということだった。白旗を上げたに等しい。