私は小さい頃からモンゴルの歴史や文化に興味をもち、小学生の頃からモンゴル人民共和国の国境外に何百万というモンゴル人が暮らしていること、南モンゴルという広大な世界があることを知ってとても驚いた。中学生の時、1911年に南北のモンゴル人が力を合わせて大モンゴル国を樹立したこと、モンゴル国の独立に南モンゴルのモンゴル人が大きな役割を果たしたこと、彼らがモンゴル国と合流するために長年闘ってきたことを知って誇りに感じた。
そして「われわれは一つの民族である」という高揚感で心が満たされ、民族意識を強くもつようになるのに強い影響を及ぼした。民族主義者であることは悲喜こもごもだが幸せである。
のちに南モンゴルの歴史を研究するようになり、落胆しショックを受けたが、その英雄や功労者たちの言動が私の模範となった。南モンゴルの文化・伝統、歌や楽器について知って夢中になり、南モンゴルのたくさんの友人や兄弟と協力関係を築き、リーダーたちとも同志となった。
南モンゴルのある組織の人が、私に「組織の活動に積極的に参加してほしい」と提案したことがあった。「私は北のモンゴル人ですよ。あなた方の組織は南モンゴルのものですから、 私は適任ではないでしょう」と答えると、彼は「私たちはあなたを南のモンゴル人だと思っていますよ」と言ってくれた。それで、私は提案を喜んで受け入れることにしたのだ。
南モンゴルのモンゴル人の前向きで暖かい性格、まっすぐで誠実な言葉遣い、未来を見据える知恵、民族主義に私は親しみを覚えた。南モンゴルのモンゴル人を私は敬愛している!
今日、南モンゴルのモンゴル人は中国の絶滅政策にさらされ、滅亡の危機に瀕している。勇敢な活動家たちを刑務所に収容し、場合によっては命まで奪っている。このような時に私がどうして平穏でいられるだろうか。闘いをもっと広げ、活発にするあらゆる手段を尽くさないでどうするのだ。
共に闘ってほしい
どんなに困難な時が訪れても、南モンゴルのモンゴル人の闘いは止まらない。世界中が南モンゴルに注目し、力を結集して闘うべきである。絶滅危惧種の生き物を守るための活動は地球全体に広がっているではないか。南モンゴルの民族・文化・文明全体が滅びつつある時に世界が十分に注意を払っていないことは悲劇である。
最後に、拘束され厳しい状況に置かれている現在、各方面からご支援いただいている南モンゴルの同志たちに感謝の気持ちをお伝えしたい。皆さんの暖かい支援が、あらゆる苦難を乗り越える勇気や翼をくれる。モンゴル民族のために共に闘おう!
南モンゴルのモンゴル人の悲劇から私たち北のモンゴル人は歴史の教訓を得るべきだった。 ところが、北モンゴルは日を追って南モンゴルと同じ道をたどっているようである。一例を挙げるなら、南モンゴルのモンゴル人の人権を守るために闘った私が「民主主義の」モンゴル国の政治犯となって刑務所に収監されている。
全てのモンゴル人が滅亡の危機に瀕している。目覚めよ!
鉄条網の中から私は南モンゴルのモンゴル人に何を望むのか。民族の権利・人権・自決権は何物にも代え難い 3つの宝、独立の大黒柱で、大切に守ってゆくべきである。言語・文化を失えば、私たちはモンゴル人だと言えるだろうか。素晴らしい母語を守るために闘って下さい。 私たちの遊牧文化を保っている草原を守るために共に闘ってほしい。これが望みである。
私は15歳の時に今のような状況になることを明確にしていたのだ。私にこのようなことが起きることは前世紀にわかっていたことだ。これは私の選択だ。自らの選択に後悔はない。
南モンゴルのモンゴル人の苦しみがなくなり、その頬をつたう涙が渇きますように! 南モンゴルのモンゴル人が自由を獲得し、幸せになりますように! 南モンゴルのモンゴル人が微笑んで生きていけますように! これらの祈りを捧げつつ、筆を擱(お)く。
(文中敬称略)
自由インド太平洋連盟副会長。1976年、福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業。経済団体職員などを経て現職。アジアの民族問題を中心に、国内外にネットワークを持つ国際人権活動家。