侵攻を阻止する確実な方法は一つ……
ホワイトハウスの状況分析室では、国防長官がバイデンにこう告げる。
「西太平洋で被害を受けたアメリカ軍は、中国の侵略を撃退することはできません。もちろんハワイからペルシャ湾までのあらゆる場所に散らばっているわが軍の航空機、軍艦、潜水艦たちを、中国のミサイル、機雷、そして防空網などをかいくぐって台湾海峡に向かわせることは可能です。
しかしこの実行には数週間はかからないにせよ、数日はかかりますし、大きな損失を被るのは確実で、成功の保証はありません。別の選択肢として、わが海軍が中国のエネルギーの輸入と食糧供給を封鎖することもできますが、この絞殺戦略には何カ月もかかりますし、そもそも台湾にはそこまでの時間の余裕はありません」
「そうなれば、侵攻を阻止する確実な方法は一つしかありません。中国軍が本土の港や飛行場で荷物を積んでいる間に、低出力の核兵器で攻撃するのです」
バイデン大統領の補佐官たちは、「アメリカはまだ強い国であり、持てるものすべてを投じれば大戦争に勝つこともできます」と言う。だがそのような紛争は、台湾を救うために台湾を破壊することにもなりかねないし、アメリカと中国にも同様に悲惨な結果をもたらすことになる。
アメリカと中国は、そもそもなぜこのような第三次世界大戦の危機に陥ることになったのであろうか?
(続きは本書で!)
タフツ大学政治学部准教授、AEI客員研究員、国防総省や情報機関のアドバイザーを務める。
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究院(SAIS)教授、AEI上級研究員、国防総省や国務省、情報機関のアドバイザーとして活躍。
国際地政学研究所上席研究員、青山学院大学国際政治経済学部非常勤講師。1972年、横浜市生まれ。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学を卒業。英国レディング大学大学院で修士号(MA)と博士号(PhD)を取得。戦略学博士。著書に『地政学:アメリカの世界戦略地図』(五月書房)のほか、訳書に『戦略の未来』コリン・グレイ著(勁草書房)、『大国政治の悲劇 新装完全版』ジョン・ミアシャイマー著(五月書房新社)、『現代の軍事戦略入門 増補新版』エリノア・スローン著(芙蓉書房出版 共訳)、『不穏なフロンティアの大戦略』ヤクブ・グリギエル&ウェス・ミッチェル著(中央公論新社 監訳)などがある。