台湾有事はこうして起こる|山崎文明

台湾有事はこうして起こる|山崎文明

「中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することである」―アメリカの最新研究が今話題を呼んでいる。一方で、中国による機雷敷設によって台湾有事が勃発するシナリオも現実味を帯びる。もし台湾海峡が封鎖されれば日本はどうなるのか。報じられない「台湾有事の盲点」を緊急分析する。


日本に要請される機雷除去

1991年、湾岸戦争停戦後に米国から日本に対して、ペルシャ湾への掃海部隊の派遣要請があったことからもあきらかなように、日本の機雷を除去する能力は米軍と比較しても高い水準にある。台湾有事が起こった際にも同様の要請が、米国からあるであろうことは、十分想定内においておく必要がある。

海上自衛隊では、機雷戦能力を有する新型の「もがみ型護衛艦(Mogami-class frigate)」に期待が寄せられている。2022年には、すでに2隻の引き渡しを終えており、最終的には22隻が配備される予定である。

「もがみ」には、フリゲートを表す「FF」に多機能性を意味する「Multi-purpose」と機雷「Mine」の頭文字の「M」を合わせた「FFM」という新しい艦種記号が採用された。「もがみ」は、排水量3900トン、速力30ノット、乗員90名、全長133メートル、全幅16.3メートルで、船体はコンパクト化され、小回りが利くよう設計されているほか、船体の外壁を平らにし、角度をつけてレーダーに捉えにくくされており、ステルス性能を高めている。対機雷戦のため、対機雷戦ソナー・システム(OQQ-11)が搭載されるほか、無人機雷排除システム用水上無人機(USV)と機雷捜索用無人機(UUV)の運用能力が付与されることになっている。ただ、こうした動きも、自衛隊は過去において掃海艦艇を減少させてきた経緯があり、十分な掃海能力を備えているとは言い難い。

もがみ型護衛艦

台湾有事はまさに日本有事

習近平国家首席は、ロシアによるウクライナ侵攻を教訓として学んでいるはずだ。台湾侵攻には、長期戦になることも覚悟しなければならないと考えていてもおかしくはない。米国はじめ西側諸国は、ウクライナへ武器を供与することで、戦況を膠着状態に持ち込んでいる。戦争の膠着化や長期化する経済封鎖は、ロシアの弱体化を狙っていることは間違いない。

ウクライナと同様に、米国が中国の台湾侵攻への対抗措置として海上封鎖を行うことを決断し、中国もまた、機雷戦による台湾の海上封鎖という軍事オプションを選択した場合は、長期戦になることは避けられないであろう。日本は、直接台湾有事に関与することがなくとも、長期間にわたるシーレーンの封鎖や掃海に追われる可能性が高い。しかもその状態は、米中が政治決着したとしても続く可能性が高いのである。台湾有事が、ミサイルが飛び交うような事態にならずとも日本は、必ず巻き込まれることを覚悟して、平時から備えなければならない。

関連する投稿


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパに君臨した屈指の名門当主が遂に声をあげた!もはや「ロシアの脱植民地化」が止まらない事態になりつつある。日本では報じられない「モスクワ植民地帝国」崩壊のシナリオ。


自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と日米安保条約に不満を漏らしたトランプ大統領。もし米国が「もう終わりだ」と日本に通告すれば、日米安保条約は通告から1年後に終了する……。日本よ、最悪の事態に備えよ!


日本人宇宙飛行士、月に行く|和田政宗

日本人宇宙飛行士、月に行く|和田政宗

今年の政治における最大のニュースは、10月の衆院選での与党過半数割れであると思う。自民党にとって厳しい結果であるばかりか、これによる日本の政治の先行きへの不安や、日本の昨年の名目GDPが世界第4位に落ちたことから、経済面においても日本の将来に悲観的な観測をお持ちの方がいらっしゃると思う。「先行きは暗い」とおっしゃる方も多くいる。一方で、今年決定したことの中では、将来の日本にとても希望が持てるものが含まれている――。


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


最新の投稿


選挙妨害に屈しません!杉田水脈、絶対に負けられない戦い

選挙妨害に屈しません!杉田水脈、絶対に負けられない戦い

月刊Hanada 公式YouTubeチャンネルに投稿した『選挙妨害に屈しません!杉田水脈、絶対に負けられない戦い』の内容をAIを使って要約・紹介。


日本心臓病学会創設理事長が告発 続発する手術死、医療事故隠蔽 東大OB医師の〝殺人〟|坂本二哉【2025年8月号】

日本心臓病学会創設理事長が告発 続発する手術死、医療事故隠蔽 東大OB医師の〝殺人〟|坂本二哉【2025年8月号】

月刊Hanada2025年8月号に掲載の『日本心臓病学会創設理事長が告発 続発する手術死、医療事故隠蔽 東大OB医師の〝殺人〟|坂本二哉【2025年8月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


小泉進次郎農林水産大臣 責任は全て私が取る|聞き手・田村重信【2025年8月号】

小泉進次郎農林水産大臣 責任は全て私が取る|聞き手・田村重信【2025年8月号】

月刊Hanada2025年8月号に掲載の『小泉進次郎農林水産大臣 責任は全て私が取る|聞き手・田村重信【2025年8月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「ニコニコ動画」無法地帯 誹謗中傷で大金稼ぎ 夏野剛ドワンゴ社長に問う|飯山陽【2025年8月号】

「ニコニコ動画」無法地帯 誹謗中傷で大金稼ぎ 夏野剛ドワンゴ社長に問う|飯山陽【2025年8月号】

月刊Hanada2025年8月号に掲載の『「ニコニコ動画」無法地帯 誹謗中傷で大金稼ぎ 夏野剛ドワンゴ社長に問う|飯山陽【2025年8月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】調子よすぎるダブルスタンダードの連発|藤原かずえ

【今週のサンモニ】調子よすぎるダブルスタンダードの連発|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。