党内ナンバー3の栗戦書までもが「ゼロコロナ政策」を批判
ところで、25日深夜、李克強首相の演説が官製メディアによって、いったん、打ち消された(『中国瞭望』「奇怪! 深夜、李克強の重大な演説が官製メディアによって打ち消される」2022年5月27日付https://news.creaders.net/china/2022/05/27/2487830.html)。
『経済日報』が習主席を支持する社論を掲載したのである(『中華人民共和国中央人民政府』「経済日報社説:現在の経済状況を包括的かつ弁証法的にとらえよう」2022年5月26日付http://www.gov.cn/xinwen/2022-05/26/content_5692340.htm)。
ところが、その翌26日、李首相は、各地方当局者に対し、夏の穀物の収穫を確実にするため「いかなる理由であれ、政府が夏の穀物の収穫に影響を与える検疫所を設置することは許されない」と再び命令を下している。(『自由時報』「習近平と李克強は闘争を始めた!李克強は検疫所を設置して夏の穀物の収穫に影響を与えてはならないと命じた」2022年5月28日付https://ec.ltn.com.tw/article/breakingnews/3942466)。
官製メディアでは、あたかも習・李バトルが勃発したかのように取り上げているが、実際は、李首相の「経済優先」の指示が“上意下達”で浸透しているのかもしれない。
更に、同27日、中央政治局会議が開催されたが、党内ナンバー3の栗戦書(政治局常務委員中、唯一の「習近平派」)は厳格な「ゼロコロナ政策」が国家経済を破壊し、政権の合法性を脅かしていると痛烈に批判したという。(『万維読者網』「奇妙だ。人民日報は思想の解放の記事を掲載したが、『習核心』に一言も言及していない」2022年5月29日付https://news.creaders.net/china/2022/05/29/2488637.html)。
これは「反習近平派」が政権の主導権をほぼ握った証左ではなかろうか。
他方、「親ロシア・反米」の楽玉成・外交部副部長(外務次官)は、将来を嘱望されていたが、放送局副局長へ左遷させられている。
(本稿は『Japan In-depth』で掲載された拙稿をまとめたモノである)
1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。拓殖大学海外事情研究所教授、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長などを歴任。2004年夏〜05年夏、台湾の明道管理学院(現明道大学)で教鞭を執る。専門は、現代中国政治論、現代台湾政治論、東アジア国際関係論。著書に『人が死滅する中国汚染大陸』、『中国高官が祖国を捨てる日』(ともに経済界)など。