徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

世界では、習近平が退陣するのではないかというニュースが飛び交っている。一部のSNSでは、習近平主席がすでに半ば退位し、李克強首相が代行しているとの書き込みで溢れている。果たして、この「宮廷クーデター」(「反習派」による習主席の退位)の“噂”は本当なのか? 徹底検証する。


「ゼロコロナ」政策に反し、公然とマスクをつけない李克強

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第6に、党内政治(その2)。

『中国瞭望』の「次男は長男と戦い続ける 李克強と習近平が再び対立」(2022年5月18日付)という記事も興味深い(https://news.creaders.net/china/2022/05/18/2484951.html)。

5月18日、李克強首相は、就職活動中の学生を激励するため雲南大学を訪れた。習主席が「ゼロコロナ」政策を強く主張する中、李首相は公然とマスクを着用せず、周囲にも着用させなかったという。
李首相や現地指導を受けた地方官僚、及び住民たちがほとんどマスクを着用していないのを、メディアは確認している(今年4月、李首相が江西省南昌市を訪問した際、役人が周囲の人にマスクを外すよう求めたという)。

このように、李首相が習主席の「ゼロコロナ」政策(今年4月25日、習近平主席が中国人民大学を訪問した際、外ではマスクを着用していなかった。ただし、室内の狭い空間ではマスクを着用している。http://www.gov.cn/xinwen/2022-04/25/content_5687105.htm)に対し、公然と反旗を翻している

いくら李首相が、今の中国経済に危機感を覚えているとはいえ、もし「宮廷クーデター」が起きていなかったら、首相が習主席に対し、これほどまで露骨に反発できただろうか。

李克強の「10万人大会」

極めつけは、「10万人大会」である。5月25日、李克強首相が中央・地方約10万人幹部を集めて、「全国経済安定化テレビ電話会議」を主催した(『自由時報』「中国共産党の権力闘争は風雲急を告げているのか。李克強、異例の10万人幹部会議を招集、解放軍上将も出席」(2022年5月26日付https://news.ltn.com.tw/news/world/breakingnews/3939346)。

前例のない規模で、韓正副首相が議長を務め、孫春蘭、胡春華、劉鶴の3副首相も列席している。
李首相は、会議で、目下、中国は経済的に困難に陥っていると強調した。より重要なのは、国務委員の魏鳳和、趙克志、王勇、肖捷が出席した事だ。経済会議に、魏鳳和・国防部長と超克志・公安部長が臨席するのは、異例中の異例と言える。同会議は、習主席の固執する厳格な「ゼロコロナ政策」を続けていては国がもたないので、いわば「国家総動員体制」を敷く目的だったと考えられる。

このような大規模会議は、「大躍進」後の飢餓問題を解決するため、1962年1月~2月にかけて行われた共産党の「7000人大会」を彷彿させる(『万維読報』「李克強、異例の10万人規模の大会 習近平の『2線後退』は確実か」2022年5月25日付https://video.creaders.net/2022/05/25/2487240.html)。

同会議で、劉少奇は、3年間(1959年~61年)の飢饉の原因を「3分の天災、7分の人災」とした。結局、毛沢東は党内の圧力によって会議で自己批判を行い、大会後、毛沢東は第2線に退いた。その後、劉少奇と鄧小平が中央委員会の日常事務を取り仕切るようになったのである。

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