相次ぐ「習近平派」の失脚
第2に、党内人事。
「宮廷クーデター」発生の傍証として、次の記事を挙げたい(『yahooニュース』「【中国ウォッチ】習近平派幹部、予想外の「落選」─閑職異動で次期指導部入り成らず(時事通信) 」2022年5月12https://news.yahoo.co.jp/articles/3abf38350bc784a4bd0ea9a7dc714d42180fadf8)。
4月20日、全国人民代表大会常務委員会は前湖北省党委書記の応勇を全人代憲法・法律委の副主任委員(副委員長)に任命した。地方トップから実権のない名誉職への転任である。
応勇は武漢市などでコロナ抑え込みに成功し、習派でも有数の「功臣」となった。そのため、今年秋の第20回党大会で党指導部メンバーの政治局員に昇格し、警察、裁判所などを統括する党中央政法委書記に就任するか、あるいは政治局入りしなくても最高人民法院院長(最高裁長官)など、閣僚より上位の国家指導者になるとの見方が強かったが、昇進できなかった。
また、4月27日に天津市長の廖国勲が“病死”した。実際は、中央紀律検査委員会が廖市長に対し厳しい取り調べを行ったために自殺したという(『中国新聞センター』「天津市長の廖国勲の自殺原因が明らかに 栗戦書が単独で天津市長に斡旋 中央紀律検査委員会が栗戦書の腐敗を調査」2022年4月29日付https://chinanewscenter.com/archives/31776)。
廖国勲も今秋の第20回党大会では、昇進が期待されていた一人だった。
廖国勲は、中国共産党ナンバー3の栗戦書(「習近平派」)の元部下で、趙楽際・中央紀律検査委員会書記が、栗戦書の腐敗スキャンダルを調査する中で、廖国勲を締め上げようと目論んだとの見方が有力視されている。
第3期目(総書記選出)を目指している習近平主席は、できるだけ多くの腹心も昇進させる必要がある。なぜなら彼らが昇進できなければ、たとえ習主席が総書記に就いても、“裸の王様”になってしまうからだ。
一方、4月30日、李克強首相に近い石泰峰は、内モンゴル自治区党委書記の退任が発表された。だが、その後、社会科学院院長に就任している。石泰峰は昨年9月に定年の65歳になったが、内モンゴル自治区トップを続投していた。来春、石が政治協商会議政協副主席になれば、国家指導者のメンバーに昇格するとされている(もう1人、注目すべき人事が行われているが、後述する)。
夜空が赤く染まり、北京市で戦車が走行
第3は、軍事面。
SNS上では、「宮廷クーデター」発生の“噂”が拡散している。
例えば、5月初旬、旧38軍2個機動師団(現、中部戦区)が上京、旧27軍9師団(同)が上海に進入し、5月4日、習近平主席は政治局常務委員拡大会議で条件付きながら、退位に同意したという(「5月2日説」もある)。(『万維ブログ』「見たところ、中国で習近平が失脚し、李克強がトップになるという噂は本当のようだ!」2022年5月6日付https://blog.creaders.net/u/13104/202205/434266.html)。
同月7日夜、浙江省舟山市で夜空が赤く染まった(『中国瞭望』「浙江省の赤い空!血のような赤色が252年前の夜の幻影を再現」2022年5月9日付https://news.creaders.net/china/2022/05/09/2481592.html)。
ただ、異常気象等で夜空が赤くなることも考えられる。
翌8日午後1時過ぎ、浙江省杭州市で原因不明の大きな音が2回続けて鳴り響いたという(『中国瞭望』「杭州で再び原因不明の大きな音が2回発生、地震でも雷でもない」2022年5月8日付https://news.creaders.net/china/2022/05/08/2481438.html)。
なお、同市では、今年3月にも同様な大音響に包まれている。
5月10日朝、北京市大興区楡垡橋で戦車が走った(『中国瞭望』「クーデターの噂が絶えない 中国共産軍が北京入りしたと伝えられる」2022年5月10日付https://news.creaders.net/china/2022/05/10/2482104.html)。
さすがに、北京市民もこれには驚いたという。
翌11日夜、福建省福州市でも夜空が真っ赤に染まった(『中国瞭望』「福州の空も血色に変わる! まさか、また漁船ではあるまいか?」2022年5月12日付https://news.creaders.net/china/2022/05/12/2482680.html)。
しかも福州市ではこれが初めてではないという。仮に、人民解放軍内で内戦が起きたとすれば、「習派」と「反習派」が戦った公算が大きい。特に、浙江省と福建省は習近平主席の地盤である。「習派」の軍が“暴走”した可能性も否定できない。