インドは、対露制裁で中国が勝者になりそうなことを懸念している。中国はロシアを金融面で支えたり、地上のパイプライン経由でロシア産天然ガスの輸入を増やしてエネルギーの安定供給を確保したりする可能性がある。中国のさらなる台頭を助けることで、米国の相対的衰退は加速するだろう。
より強大で侵略的な中国の台頭の矢面に立つのは近隣諸国、とりわけインドである。米国の「核の傘」の下で安全を保障されている日本やオーストラリアと違い、インドは単独で中国に対処せねばならない。
バイデン氏のアジア政策は、インドの安全保障上の試練をただでさえ増幅している。パキスタンに支援されたテロ集団タリバンにアフガンを明け渡し、米国の制裁でミャンマーを中国に接近させたのに続いて、バイデン氏は米国内での中国の秘密活動を摘発する司法省の捜査態勢を縮小するなど、中国に融和的な姿勢も取っている。
ウクライナをめぐる危機的状況は、国際社会が冷戦の終結以降で最も危険な時期に入ったことを示す。米露新冷戦の到来で、インドの中立がもっと試練にさらされることは確かだ。
インド政策研究センター教授。専門は戦略研究。著書にAsian Juggernaut: The Rise of China, India and Japan (Harper Collins, 2006)、Water: Asia’s New Battleground (Georgetown University Press, 2011) など。