日本共産党の小池晃と河野太郎
2016年4月、財政制度等審議会・財政制度分科会は、肺がんにこの薬を使うと年間1兆7500億円の支出となると公表。すぐに小野薬品は、オプジーボの2017年3月期の売上高の見通しは1260億円だと財務省審議会の試算に反論した。
小野薬品の主張は認めてもらえず、厚労省はオプジーボの薬価の25%の切り下げを検討。しかし、これに嚙みついたのが日本共産党の小池晃氏だった。
同年10月6日の予算委員会で、小池氏は「企業の言い値で大盤振る舞いだ」 「25%ではあまりに不十分。大幅に引き下げるべきだ」と政府を追及。「しんぶん赤旗」もこれを大きく報じた。
同年11月16日、厚労省はこの流れに屈し、2018年度の薬価改定を待たず、臨時措置として2017年2月にオプジーボの価格を50%引き下げることを決定した。
共産党はその後も集中的にオプジーボの価格引き下げを迫り、2018年にも2回価格が引き下げられた。2021年8月にも価格は引き下げられ、現在、オプジーボの価格は100ミリグラム約15万5000円。当初の価格の約5分の1に切り下げられている。
日本の医薬品メーカーのやる気を削いだのは日本共産党だけではない。2015年10月、第3次安倍改造内閣で国家公安委員長兼行政改革担当相として初入閣した河野太郎氏もそのひとりである。
河野氏は2016年、政策セミナーで「オプジーボの値下げは私の功績だ」と語っていた。
しかし、共産党の口車に乗せられて日本発の画期的新薬の未来をずたずたに切り裂いたことが、はたして功績と言えるのだろうか。
河野太郎に裏切られた研究者たち
医薬品の価格や研究資金を削減することに熱心だった河野氏は自身のブログ「ごまめの歯ぎしり」で、33回にもわたり研究者の皆様へという投稿を繰り返している。研究者の意見を大臣がブログで聞いてくれると期待されたやり取りだった。このなかで、大学の研究者たちは研究予算の充実を求めていた。しかし、対話への期待は見事に裏切られた。
大臣退任後の2017年1月(当時の肩書は自民党・行政改革推進本部長)、
「科学技術振興予算をもっと増やせるという幻想を抱いている方がいらっしゃったら、年明け早々にも現実を直視していただきたいと思います。科学技術振興予算は今後、増えません。だから現在の予算をいかに効率的に使うか、あるいは成果を生まない大型プロジェクトをつぶしてほかのことに振り替えるか、または成果を生まない研究者の予算をほかに振り替えるかしなければなりません」
と回答した。
2020年9月、行政改革担当大臣に再び就任した河野氏は、予算の無駄を検証する「秋の行政事業レビュー」で次のように述べている。
「薬価の決め方は、知的所有権を含めて難しい問題があることは理解するが、国民がある程度納得できる決め方はどうしたらいいか。海外の事例を調べるなど、いまのやり方について不断の検討をすることは必要だ」
「医療費がここまで大きくなり、高齢化に伴って医療費が大きくなるなかでどう適正化するかは、国民の大きな関心事だ」
河野氏も日本共産党も「国民のため」というが、本当に国民のことを考えているのだろうか。国家をどう守るのか、彼らにはマクロな視点が欠けている。
たしかに、世界中で必要とされる画期的なオプジーボは国民皆保険制度のなかでは医療費を圧迫するだろう。だが一方で、国を豊かにしてくれるファクターとしてとらえれば、他にも道はあったはずだ。日本の誇る新薬の未来を上手に使う議論もせず、簡単にその価値を切り下げてよかったのか。
科学技術振興予算を増やさないと断言し、画期的なオプジーボを叩いた河野氏が、2021年1月にワクチン担当大臣となったことは悪い冗談のように思えた。