悪夢の「立憲共産党」|坂井広志

悪夢の「立憲共産党」|坂井広志

「政権の準備は整っています。10年間準備をしてきた。準備と覚悟はできています」と枝野幸男代表は豪語するが、実態はどうなのか。国家観のかけらも見当たらず、政治理念も感じられず、そこにあるのは市民団体臭と左翼臭だけ――。民主党政権は悪夢だったが、共産党と組む「立憲共産党」はもっと悪夢だ。


最後に登場した志位委員長

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政党同士が直接政策協定を交わすのではなく、市民団体の政策に各党が賛同するという形をとることで、立民も抵抗なく加わることができたわけだ。4党党首のうち最後に姿を現したのは、共産の志位和夫委員長だった。

枝野氏、社民党の福島瑞穂党首、れいわの山本太郎代表がすでにテーブルについているなか、志位氏は締結式が始まる直前に悠然と会場入りしてみせた。「市民連合の下請けです」と冗談を飛ばしながらマスコミに資料を配布していたのは、立民の党職員だった。

共産主導のもとで市民連合が動き、その市民連合の下働きを立民の党職員がする。そんなようにも映ったこの光景は、会合の性質を象徴しているようだった。

その市民連合だが、9月に出した「野党共闘で自公政権を変えよう!」と題した声明には、「私たち市民連合は、安保法制の廃止と立憲民主主義の回復をめざして、憲法破壊を続ける安倍、菅と続く自公政権と対抗して『市民と野党の共闘』をスローガンに闘ってきました」と書いてある。

声明には45都道府県の140団体が賛同している。この書きっぷりからして、市民連合の性質は推して知るべしだろう。ちなみに、運営委員はテレビなどでもおなじみの法政大の山口二郎教授(政治学)だ。もはや活動家といっても差し支えなかろう。
 
安保関連法に反対する市民団体が平成27年8月30日に国会周辺で行った集会では、「昔、時代劇で萬屋錦之介が悪者を斬首するとき、『たたき斬ってやる』と叫んだ。私も同じ気持ち。もちろん、暴力をするわけにはいかないが、安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる!」と、呼び捨てで実に乱暴な発言をしている。

市民連合と野党4党との政策協定締結式で、山口氏は新型コロナウイルスの感染拡大を念頭に、「安倍・菅政治が続いたために、死ななくてもよい人が何人亡くなったのか。適切な医療を受けられないまま自宅で亡くなった人がどれほど無念だったのか。こういったことをかみしめることから衆院選の戦いを始めたい」と戦闘モード全開の挨拶をしていた。

新型コロナによる死者を引き合いに出して出席者に活を入れるのは、いささか不謹慎ではないかと思わざるを得ない。遺族の心情は、一言で言い表せることができるほど単純なものではないはずだ。

左翼が好んで使うフレーズ

各党が締結した政策は、当然のことながら左翼が好みそうなものばかりだ。

6分野20項目あり、最初に据えているのが「安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」。2番目にあるのが「平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」だ。

「憲法改悪」といい「平和憲法」といい、これらの表現は左翼が好んで使うフレーズで、共産の息がかかった市民団体が中心となって作成した可能性は高い。消費税減税、原発のない脱炭素社会の追求、選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法の成立なども盛り込まれている。

締結式で志位氏は、「提言の内容に全面的に賛同致します。市民と野党の総選挙を戦う共通の政策的旗印は立派に立った。この旗印を高く掲げて、結束して選挙に勝ち、この政策を実行する政権を作るために頑張り抜きたい。9年間に及ぶ『安倍・菅自公政治』に対する総決算、チェンジの審判を下すべき選挙だ」と鼻息が荒かった。

志位氏はこのあと行われた党中央委員会総会で、「この(市民連合との)合意を踏まえ、政党間の協議を速やかに行い、政権協力、選挙協力について前向きの合意を作り上げ、本気の共闘の態勢をつくるために力を尽くします」と野党間の協力を一層前進させることを強調。

枝野氏はかねて共産党との連立政権を否定しているが、志位氏は「政権を争う総選挙で選挙協力を行う以上、政権協力についての合意は不可欠です。政権交代が実現したあとの新しい政権への日本共産党の協力の形態は、『閣内協力』も『閣外協力』もあり得ます」と立民に揺さぶりをかけ続けている。

立民が共産の仕掛けに乗せられ、それに押され気味になっている構図が浮かび上がる。

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