やめられないモリカケ、サクラ
(写真提供/時事)
これには驚いた。
立憲民主党の枝野幸男代表が、9月7日に発表した次期衆院選に掲げる公約第1弾のことだ。その名も、政権移行プログラム「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」。
前日に党幹部が「明日、枝野氏が政権取ったらすぐやることを発表する」ともったいぶって話していたため、どんなものが出てくるのかと楽しみにしていたところ、国民生活に関係のない、「プロ市民」が喜びそうなトピックスが羅列されていた。
7点あるうち、30兆円規模の補正予算の編成、新型コロナウイルス感染症対策司令塔の設置、令和4年度予算編成の見直しの3点はまあいいとして、残りの4点がいただけない。
残りの4点とは、
▶日本学術会議の会員人事で菅義偉首相に任命されなかった学者6人の任命
▶名古屋出入国在留管理局の施設に収容中だったスリランカ人女性が死亡した事案における監視カメラ映像と関係資料の公開
▶学校法人「森友学園」をめぐる財務省決算文書改竄についての関連文書(立民の言う「赤木ファイル」)開示
▶森友学園、加計学園、桜を見る会をめぐる真相解明チームの設置。
それぞれについて問題意識をもつのは一向に構わないが、政権を獲得して真っ先にやることがこれかと思うと、あきれてしまう。止める人はいなかったのだろうか。
国家観のかけらも見当たらず、政治理念も感じられず、そこにあるのは市民団体臭と左翼臭だけだ。これでは、左翼の票は獲得できても浮動票は得られまい。どこの党であれ、浮動票なくして政権を獲得することはできない。それともこれは、支持者向けのアピールなのか。党関係者も、「いつまで桜をやっているんだ」とあきれ顔だ。
「立民推し」の朝日新聞と毎日新聞
枝野氏は9月7日の記者会見で、「政権が代われば何が変わるのかということを、初閣議だけでもこれだけ変わるということを、国民の皆さんに具体的に知ってもらう。政権が代われば間違いなく直ちに決定できることをお約束する」と語ったが、こう言ってはなんだが、全く胸が躍らなかった。「変えなくていいですから」と突っ込みたくなったのは筆者だけではあるまい。
さらに驚くことに、この話を朝日新聞は8日付朝刊1面トップで報じていた。東京の最終版の主見出しは「立憲 疑惑解明の争点化狙う」。
2面では関連記事を大々的に載せており、自民党総裁選一色にはしないという朝日新聞の意気込み、意地がうかがえる。2面の記事のなかには、公約に関する党幹部のこんなコメントが使われている。
「自民党は絶対できず、差別化してアピールできる」
それはそうだろうと、このコメントには失笑してしまった。
毎日新聞は9日付朝刊の社説で取り上げ、「『安倍・菅政権』が後ろ向きだった政治不信の払拭に取り組む姿勢をアピールした」ともちろん好意的。「医療体制を中長期的にどう構築するかなど、国民の命と暮らしを守る具体的な提案を求めたい」とも記しており、この点については同感だ。
公約第1弾では新型コロナ感染症に関連して、生活支援について一言触れているが、医療体制には触れられていない。閣議決定にこだわらなくてよいので、公約第1弾はコロナ対策一色にするくらいの気迫がほしかった。