悪夢の「立憲共産党」|坂井広志

悪夢の「立憲共産党」|坂井広志

「政権の準備は整っています。10年間準備をしてきた。準備と覚悟はできています」と枝野幸男代表は豪語するが、実態はどうなのか。国家観のかけらも見当たらず、政治理念も感じられず、そこにあるのは市民団体臭と左翼臭だけ――。民主党政権は悪夢だったが、共産党と組む「立憲共産党」はもっと悪夢だ。


「ZEROコロナ戦略」は封印か

立民は「ZEROコロナ戦略」を掲げているが、名称が誤解を招くとして封印することを検討しているようだ。枝野氏は3日、オンライン配信の番組で「ゼロコロナ戦略という言い方をしてきたのを、今後使ったほうがいいのかどうか若干迷いも出ている」と語った。

「感染者をゼロにする」 「ウイルスをゼロにする」などという意味なのかと誤解されることが多く、非現実的な政策と受け取られかねないのが悩みの種らしい。意味合いとしては、ニュージーランド(NZ)などのように市中感染を徹底的に封じ込めることを目指しているという。NZは厳しい水際対策やロックダウン(都市封鎖)を導入しているが、立民がどこまで厳格な措置を検討しているのか聞きたいものだ。

そもそもロックダウンは人口約500万人のNZだからこそ可能であって、人口約1億2000万人の日本で、共産国家の中国でもあるまいし、実現性はあるのだろうか。ロックダウンは経済への影響が大きいだけでなく、相当な私権制限を伴う政策であるため、日本で導入するとなると国民の反発も予想される。それこそ日本では非現実的と思われる。

3日に行われたこのオンライン配信の番組では、枝野氏と福山哲郎幹事長が対談をしている。この対談も突っ込みどころ満載だった。

「第2次安倍政権ができてから9年近くの間、自民党の統治能力が落ちてきたと強く感じてきた。統治能力が失われたことをこの混乱ぶりが示している」

「(自民党は)政権運営は長年の蓄積があり、『うまいなあ』 『見習うべきところが多い』と思ってきたが、ものすごい劣化ぶりだ」

枝野氏は、菅首相の突然の辞任表明とそれに続く総裁選のドタバタぶりを踏まえてそう語り、政府・自民党をこき下ろした。だが、党の新代表が選ばれても、求心力が働かず、遠心力ばかりが働き、ガバナンス(統治能力)が問われ続けたのが民主党だ。その中枢にいた枝野氏に言われたくないというのが、自民党の本音だろう。

一方の福山氏は、「(次の内閣は)選挙管理内閣の色彩が非常に強くなる。直後に衆院選がある。そこでわれわれが政権を担わせていただける議席をいただければ、あっという間にその政権はひっくり返る」と言ってのけた。あまりの希望的観測に、その言葉はむなしく響く。

「枝野総理」と「福山官房長官」

そして福山氏が持ち出したのは、やはりというべきか、国民には迷惑だったが、「過去の栄光」である民主党政権の話だった。菅直人政権の際、枝野氏は官房長官、福山氏は官房副長官を務めている。2人は東日本大震災、東京電力福島第一原発事故の対応にあたり、深い絆で結ばれている。枝野、福山両氏が、その過去の栄光にすがっているのは間違いない。
 
対談で福山氏はこんなことを語っていた。
「官邸を我々が離れるとき、東日本大震災の危機を救うために一緒になって頑張ってくれた官僚のみなさんがたくさんいて、花束を持って見送ってくれた。『また帰ってきてください』と何人もの方に言われたんですね」

どの政権であれ、こうしたシーンはよくあるが、「また帰ってきてください」というセリフが社交辞令だということぐらいわからないのか。

福山氏はこう続けている。
「もう一度官邸に戻って、枝野代表が総理としてこの国の舵をとっていただくことを切望して、4年前も立民を作ることを選択させていただいた。コロナの危機のときに、枝野代表がこの国のトップになって命と生活を守るのが立民の役割だと思っている」

結党に参加したのが枝野氏を首相にするためだとしたら、実に視野狭窄な話であり、そんな話は2人だけのときにしてもらいたい。

福山氏は9日の文化放送の番組で、「どういう形で閣僚を作るのか。全部とは言わないが、どこかの時点で言わないといけない」と語り、政権を獲得した場合の閣僚候補を明らかにする考えを示した。相場観でいえば、福山氏は官房長官だろうが、そろそろ新陳代謝をお願いしたい。

原発事故の際、当時の菅首相が震災翌日に原発を視察し、東電社員を怒鳴り散らすという指揮官としてあり得ない行動に出たことは有名な話であり、福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の報告書で、「菅首相の個性が政府全体の危機対応の観点からは混乱や摩擦の原因ともなったとの見方もある」と指摘されたのをご存じの方も多いだろう。

枝野氏は当時の心境を、5月に出版した著書『枝野ビジョン 支え合う日本』(文春新書)でこうつづっている。

「3月12日の早朝、菅総理は、原子力発電所を含む被害状況を直後に把握する必要があるとして、ヘリコプターで総理官邸から飛び立った。その直後、万一の場合が頭をよぎり、私は背筋が寒くなった。(中略)総理に万一のことがあれば、この空前の危機に、トップリーダーとして対応しなければならない。(中略)総理が背負っているものの重さを、はじめて、みずからのこととして垣間見た瞬間だった」

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