なぜ福島県は韓国に抗議しなかったのか|渡辺康平

なぜ福島県は韓国に抗議しなかったのか|渡辺康平

「原発事故と福島」は情報戦である。「正しい情報を発信すればわかってくれる」という相手の善意を基本とした風評対策では、中国や韓国の悪意あるプロパガンダには太刀打ちできない。国と県が連携して、相手国内において積極的なロビー活動やPR活動を展開すべきである。


「やってはいけない」検査方法

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しかも、韓国の関係者は空間線量計を食品にあてて計測するという「やってはいけない」検査方法を堂々と披露していたことも、想像以上だ。

韓国のスクリーニングとは空間線量計を食品にあてて計測するという検査手法であるが、この手法では食品の放射線量を正しく計測することはできない。

食品の放射線検査とは食品を裁断してヨウ化ナトリウムシンチレーションカウンターなど専用の機材で検査を行う。この検査について福島県では原発事故以降、県内の農産物は出荷に向けて放射性物質の調査を行ってきた。

もし、空間線量計で計測できるほど野菜や果樹から放射線が放出されていれば、非常に強い放射線量を出していることになる。はっきりいって失笑ものであった。

福島県のGAP

また、福島県では原発事故以降、さらなる安全確保のための取り組みとして、GAPの普及に取り組んでいる。GAPとは、Good(良い) Agricultural(農業の) Practice(行い) の略語で、農業生産工程管理と訳される。食の安全性を確保するため「福島県GAP推進基本方針」において、放射性物質を最も優先すべき危害要因とし、県産農産物の一層の安全性の確保による産地の信頼性の向上とイメージアップをGAPの普及によって図っている。

分かりやすく言えば、「農作物由来の食中毒事故を起こさない」「異物を混入させない」「肥料による地下水汚染などを起こさない」などを実現するための取り組みがGAPということだ。さらに、ほ場空間線量、土壌のセシウム濃度の把握などの放射性物質の点検項目を追記した福島県独自の「FGAP」を推進している。

東京オリンピックの選手村では、福島県を始めとした被災地におけるGAPを取得した食材が活用され、選手の皆さんに提供された。

韓国のオリンピック関係者が食品の放射線検査の仕方もわからず、福島県産を含む日本の農林水産物にクレームをつける彼らの姿は、はっきり言って無知故の所業である。

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