政治とは、二つの相反する事象があれば両者の全体最適を追求する行為に他ならない。もちろん国の存亡がかかる事態となれば白黒をはっきりつけなければならないが、現在のコロナ対策に限って言えば、感染制御と経済活動維持の全体最適を見つけるべきであることは疑いがない。
経済活動を破綻させないギリギリまでの感染許容のラインがどこであるかを指し示すのが分科会の感染症専門家としての役割ではないだろうか。彼らは人流の抑制を主張し続けさえすれば誤ることはないであろうが、それは単に責任を回避しているに過ぎない。緊急事態宣言の形骸化は国民がそういった政策の転換を求めている証左である。
政府には早急に対処方針の新機軸を打ち出し、国民に説明し、国民を一つの方向に導いて欲しい。もし分科会が抵抗するのであれば、その体制の一新も辞さない覚悟が必要である。(2021.08.02国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
日本医科大学教授・千葉北総病院副院長・救命救急センター部長。1962年生まれ。1987年金沢大医学部卒業。金沢大医学部附属病院救急部・集中治療部講師、日本医科大救急医学准教授などを経て2014年4月から現職。千葉県医師会理事、千葉県災害医療コーディネーター、防衛省メディカルコントロール協議会部外有識者委員などを兼任。フライトドクターとして医療に当たる日本のドクターヘリによる救命救急医療の第一人者。ドラマ 「コード・ブルー」の医療監修、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」出演。