武漢ウィルスの感染者数が再び急増している。その原因を東京五輪の開催と結びつける論調もあるが、無観客と「バブル方式」(選手など五輪関係者と外部との接触遮断)を考えれば、そういった批判に明確な根拠があるとは思えない。周知の通り、ワクチン接種により高齢者の死亡者、重症者の数は激減しており、7月29日の東京都のデータでは新規感染者の83%は40歳代以下である。わが国の感染者の死亡率は50歳代で0.28%、40歳代で0.09%、30歳代ではわずか0.02%であり、よって感染対策は働き盛りの40~50歳代のワクチン接種推進と重症化抑制に焦点を絞ればよい。
感染制御一辺倒から脱却を
感染症の拡大を抑え込むには人の動きを制限するのが最も効果的だということは理解できる。政府への提言を行う新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下、分科会)はこの1年半の間、人流抑制を感染対策の主軸としてきた。確かにこのウィルスの様相が不明だった1年前であれば、その考えは正しかった。しかしながら、感染リスクや死亡率が明らかとなり、治療法の開発が進み、ワクチンの効果が判明した現在においても「ゼロコロナ」を目標に置く方針に拘泥し、国民生活を縛り続けることは理解しがたい。
とりわけ飲食店がその影響を一番強く被っている。にもかかわらず、分科会や日本医師会が相変わらず感染者数を減らすことに執着しているのは、どういうことであろうか。社会活動は科学的思考だけでは成立しない。このウィルスに対する医学的な情報が一定程度把握できた今、感染制御一辺倒の政策からの脱却を図らなければならない。