中国の人口が61年ぶりに減少に転じた。国連の「世界人口予測」や中国社会科学院の予想より8年も早い頭打ちである。同時に2022年の国内総生産(GDP)の伸びも、政府目標の5.5%を大きく下回って景気減速が明らかになった。中国の労働人口はすでに減少しており、今後、高齢者数を上乗せしながら若年者数を減らしていく。この歴史的な構造変化により、習近平国家主席が進める「独裁強国」路線への逆風が強まるのは避けられない。問題は、国力のピークを迎えた新興大国が一転、迫り来る衰退を恐れると、他国に攻撃的になるという「ピークパワーの罠」が現実味を帯びてくることである。
人口が減少、経済は減速
中国の人口は2022年末、建国以来最少の出生数を主因として前年比85万人減の14億1200万人になった。中国はこれまで世界最大の労働人口をバネに、「世界の工場」として急速な経済発展を遂げてきた。しかし、巨大人口が縮小に転じると、少子高齢化という新たな重荷を背負う。
同時に発表された昨年のGDP成長率3.0%は、新型コロナウイルスの世界的流行が始まった2020年を除くと、1970年代以降で最低だ。厳格な「ゼロコロナ」政策が生産と消費の足かせとなったほか、不動産バブルの崩壊、膨張する債務、米国による輸出規制など経済のデカップリング(切り離し)圧力が影響している。今後、経済活動が回復するとの見通しもあるが、中長期にはかつてのような高成長は望めない。急速な高齢化に対応する社会保障費がひっ迫し、迎えるのは悩める超老人大国としての姿であろう。
日本経済研究センターは昨年末、米中の経済力が2033年にも逆転するとしていた予測を、中国が米国を抜くことはなくなったとの見通しに変えた。中国は人口減少に対処するため一層の構造改革を必要としている。しかし、習体制はトップダウンの政治支配を目指し、国内の反対意見を容赦なく押しつぶす。