「ゼロコロナ」の悲劇 緊急事態宣言はもう必要ない|木村盛世

「ゼロコロナ」の悲劇 緊急事態宣言はもう必要ない|木村盛世

毎日報道される新規感染者数にいったいどれほどの意味があるのか? 病気は新型コロナウイルスだけなのか? 客観的データとファクトで明らかにする新型コロナウイルスの真実。


では、今後の感染状況はどうなっていくのか。正直、明確な答えはない。  

繰り返すが、新型コロナウイルスは新しいタイプの風邪である。風邪であることは、季節性があるということだ。これまでの知見から、感染は温度が上がること、湿度が上がることによって減少することがわかっている。  

また、RNAウイルスであるため変異しやすいが、現在までの知見では、変異株が変異前のウイルスと比して致死性が高いことは確認されていない。しかし、ウイルスは自分たちのテリトリーを拡大するために変異するため、変異すれば感染力は高まるのが一般的である。  

これらの条件を考慮すると、今後の感染者数は気温や湿度、変異株など、コントロールできないところで決まってくる面が大きい。

感染者数より重症者数を指標とすべき

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本論の東京オリンピック・パラリンピック開催について述べる。  

ワクチン接種は極めて重要であり、菅内閣の取り組みは高く評価する。高齢者3600万人のワクチン接種が進むことにより、高齢者の感染や重症化を劇的に減らせれば、新型コロナウイルス感染者の全員を入院させるような極端な対応をしない限り、医療はひっ迫しなくなり、緊急事態宣言もいらなくなる。  

ただし、前述の図1からわかるように、高齢者には感染者が比較的少なく、高齢者のワクチン接種も進んでいるが、感染者数は数字的にはなかなか下がらない。それもあって、感染者数から重症者数へ、重視すべき指標を変える必要がある。  

また、感染者数の推移は温度、湿度、変異株などの人為的に制御できる因子以外によるため、今後は感染者数が増えてきた場合に備えて準備をしておかなければならない。特に東京を中心に感染者数が増え、東京地区での医療キャパシティでは対応できなくなった場合の想定はしておく必要がある。  
具体的にはどうしたらよいか。それは、各地に派遣できる医療従事者の遊軍部隊をつくることと、地域を跨いだ広域搬送である。  

新型コロナウイルス流行の初期に、イタリアでは高齢者の重症者が医療キャパシティを越えるほど増加し医療崩壊を起こしたが、増えすぎた重症者を引き受けたのはドイツだった。  

重症者を搬送するのは大変だが、医療現場からすると来てもらったほうが対応しやすい面もある。医療従事者が医療機関からいなくなれば、現地医療機関の対応能力が低下してしまうし、勝手知ったる場所で治療にあたるほうが、効率的な医療提供ができるからである。  

重症者対応には呼吸器などの高度救急医療が必要なため、効率的な医療提供はその患者の予後に強く影響する。あまり知られていないが、自衛隊ヘリはICUを搭載しているものもあり、ドクターヘリの数より多い。また、首相が直接指揮できるのは自衛隊ヘリであることから、これを使う以外ない。   人を運ぶことは容易ではない。DMAT(災害派遣医療チーム)を除く通常の医療従事者がその搬送を簡単に行えるのは、ドラマだけである。ましてや、重症者の搬送は訓練を受けた者でなければ、簡単に行えるものではない。  こうした広域搬送は、国交省、防衛省が主体となって行わないとできない。たとえ今回必要なかったとしても、今後新たな感染症が発生した時に、必ず考慮しなければならない国家事業である。

報じられない五輪開催のメリット

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