「ゼロコロナ」の悲劇 緊急事態宣言はもう必要ない|木村盛世

「ゼロコロナ」の悲劇 緊急事態宣言はもう必要ない|木村盛世

毎日報道される新規感染者数にいったいどれほどの意味があるのか? 病気は新型コロナウイルスだけなのか? 客観的データとファクトで明らかにする新型コロナウイルスの真実。


三度目の緊急事態宣言が大都市を中心に発出されているが、そもそも緊急事態宣言は、新型コロナウイルスの重症者対応に医療が耐えられないから、すなわち医療ひっ迫が起こっているから出されたものである。  

ワイドショーだけでなく、車中の政府広告でも、医療ひっ迫の状況が繰り返し放映されている。しかし、先進諸国に比して“さざ波”程度の感染者数で、なぜ医療がひっ迫するのだろうか。  

流行の初期である2020年春にはイタリアが医療崩壊を起こすなど、欧米の新型コロナウイルスの重症化対応は深刻な状況に陥った。当初イギリスは、スウェーデンが選択した緩和戦略(高齢者の自主的行動制限以外は、通常の社会経済を回すやり方)を進めたが、一週間で方向転換し、ロックダウンなどの厳しい抑圧戦略に切り替えた。その理由は、重症者が多くなりすぎて医療が耐えられないという理由からだった。  

その後、欧米は大きな感染者の波を経験し、一時期は日本の感染者数の100倍を超えるまでになった。しかし、そうした欧米諸国においても、流行初期以降は医療崩壊を起こしていない。それなのになぜ、日本の医療がひっ迫するのか? それは、日本が医療総動員になっていないからだ。  

日本は160万床という世界で有数の病床数を持っている。だが、コロナ病床数は3万4116床と、他のG7諸国と比べても極端に少ない(グラフ2参照)。  

しかも、人口対の医療従事者の数はそれほど多くない。そのなかで新型コロナウイルス対応をしている医療機関は、全体の5%以下である。言い換えれば、95%の医療機関が新型コロナウイルスに感染した患者を受け入れていないということである。  

その大きな原因は、日本の医療体制の問題にある。イギリスなどヨーロッパの多くの病院は公営である。しかし日本は80%が民間病院であり、加えて現在の医療法により、国や地方自治体の権限が及ぶ医療機関はごくわずかである。それゆえに、国が医療機関に新型コロナ患者受け入れを強要することは難しい。

本当にエボラ出血熱と同類なのか?

また、現在の感染症に関する法律のなかで、新型コロナウイルスは、エボラ出血熱などの感染症法上一類相当という極めて病原性の高い感染症として扱われているため、医療機関の体制装備などに労力を要する。新型コロナウイルス患者を受け入れた医療機関の90%が赤字になっている。  

しかも、ひとたび院内感染などが起こればメディアから叩かれるなど、社会的損失も大きい。その結果として、医療者の良心などで、新型コロナウイルス患者受け入れを決めたごくわずかの医療機関に大きな負担がかかり、医療がひっ迫しているという構図が事の真相である。  

これに関しては、拙書『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥新社)に詳述したので参照されたい。

今後の感染状況はどうなっていくのか

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