中国では現在、47基の原子炉が運転中で、その総発電容量は米国とフランスに次ぎ世界第3位の4,875万キロワットとなった。将来的に200基を建設する計画で、既に多数の国と輸出交渉をし、英国やフランスの原発建設にも出資している。広域経済圏構想「一帯一路」の主目的の一つが安価な原発と石炭火力発電所の輸出だ。石炭火力の輸出は国際シェア53%に達し、我が国は敗退した。
世界一のエネルギー大国にのし上がろうとしている中国の独走に、「原発の安全第一」の観点から国際社会がブレーキをかける必要がある。まず、原発に異常があった場合の速やかな情報開示と、稼働を一時停止して点検する取り組みを求めたい。(2021.06.21国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
国基研理事、東京工業大特任教授。1952年、東京都生まれ。東京工業大理工学研究科原子核工学修士課程修了。専門は原子炉工学。東芝に入社し原子力の安全性に関する研究に従事。同社電力・産業システム技術開発センター主幹などを務め、2007年に北海道大大学院教授に就任。同大大学院名誉教授・特任教授を経て現職。