わが国は、海上保安庁と自衛隊の行動をシームレスにつなぐ「領域警備法」の制定や、わが国に侵攻しようとする勢力を迎撃する長距離スタンドオフミサイル(巡航ミサイル)の配備を前倒しで進めるべきである。
そして、わが国が尖閣侵攻とともに警戒しなくてはならないのは、中国による台湾への軍事侵攻である。中国が実行する可能性はこちらのほうが高い、と私は考える。
習近平主席は、国家主席の任期を撤廃する2018年の憲法改正時やその後も繰り返し自らが国家主席である間に台湾を統一する意欲を示している。2022年以降、国家主席3期目に突入し、2027年の4期目以降も国家主席であり続けるためには、3期目の間に台湾統一に向けた成果を上げなくてはならない。
しかし、一国二制度による平和的統一を台湾が選択することはあり得ず、習主席が台湾を統一しようとするなら軍事侵攻しかない。昨年、人民解放軍制服組トップが「能動的戦争立案」という言葉を使い始めたのも、台湾が念頭にある。
このようにわが国は、中国の対外宣伝工作の先にある覇権国家としての対外侵略を警戒しながら、中国の対外宣伝工作を見ていかなくてはならない。
孔駐日大使のような論文については、英・仏・豪各国のように政府としてしっかりと反論し抗議をすべきであるし、途上国を味方につけようとする中国のプロパガンダも警戒しなくてはならない。
そのうえで、わが国はこうした中国の対外宣伝工作の緻密な分析とともに、中国の人権侵害と尖閣諸島や南シナ海での覇権主義的行動について断固許さず、制裁を含めた厳しい対応を取っていくべきである。(初出:月刊『Hanada』2021年4月号)
1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で選。現在、参議院自民党国会対策副委員長。