ジョンソン英首相は中国を許さない|岡部伸

ジョンソン英首相は中国を許さない|岡部伸

脱中国に舵を切り、関係諸国と「中国包囲網」を形成する英国のジョンソン首相。自由貿易協定、ウイグル人権制裁、北京五輪ボイコット――日本は英国と手を携えて自由主義国の気概を示せ。今こそ「新・日英同盟」を!


自由諸国をけん引する米国でも反中の「列国議会連盟」に加入している共和党のマルコ・ルビオ上院議員とロバート・メネンデス上院議員がボイコットを呼びかけ、昨年3月、共和党のリック・スコット上院議員が主導して12人の超党派議員がIOCに22年冬季五輪開催地を再検討するよう要請した。

そしてバイデン政権に変わった21年2月、ニッキー・ヘイリー元国連大使がFOXニュースに、北京冬季五輪を1936年のベルリン五輪になぞらえ、「ヒトラーは五輪をナチスのプロパガンダに最大限に利用、第二次大戦とホロコーストを引き起こした。現在の中国はナチスよりも危険であるのは明らかだ」と寄稿した。その根拠として、香港の民主化運動の弾圧、コロナにおけるパンデミック(世界的大流行)の「組織的で徹底した隠蔽」、そしてウイグル人への「ジェノサイド(集団虐殺)」を挙げた。

米オンライン誌『The Diplomat』によると、冬季五輪でメダルを獲得できる国は西側先進国が多く、不参加を決めれば、結束しやすいという。そして2019年7月にウイグル人の拘束を問題視して国連人権理事会に送付した共同書簡に署名した日本と英国をはじめとする22カ国に署名しなかった米国を加えた23カ国がボイコットの潜在的連合になると指摘している。

1980年のモスクワ五輪は旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議して米国主導で西側がボイコットした。バイデン政権は最終的な決断を下していない。しかし、米国務省のプライス報道官は4月6日の記者会見で、北京冬季五輪に米国が同盟諸国とともに共同ボイコットに踏み切る可能性に関し、「議論したい事項だ」とし、ボイコットも選択肢として排除しない立場を示し、「連携した取り組みは米国だけでなく同盟・パートナー諸国の利益にもなる」と述べ、同盟・パートナー諸国と対応を協議していく考えを明らかにした。

その一方で、「今はまだ2021年4月で、北京五輪は当分先だ」と指摘し、いつまでに参加の是非を決定するかは定めていないと強調した。

国際刑事裁判所が中国を捜査か

米国や同盟諸国が42年ぶりに北京五輪をボイコットに踏み切れば、国際刑事裁判所が中国当局によるウイグルでの人権侵害に捜査を開始することを促す説得材料になるとの見方もある。ボイコットに関する論議が本格化すれば、中国が五輪の有力スポンサーである米企業などに対してボイコットに反対するよう圧力をかけてくることが確実で、バイデン政権による米経済界に対する協力要請や根回しが活発化する可能性がある。

同盟国の日本は北京五輪ボイコット問題でも足並みを揃えることが求められ、東京五輪開催を控え、厳しい対応を迫られそうだ。

『新・日英同盟: 100年後の武士道と騎士道』

¥ 1,870円

岡部伸

https://hanada-plus.jp/articles/214

産経新聞論説委員、前ロンドン支局長。1959年生まれ。81年、立教大学社会学部を卒業後、産経新聞社に入社。社会部記者として警視庁、国税庁などを担当後、米デューク大学、コロンビア大学東アジア研究所に留学。外信部を経て、モスクワ支局長、編集局編集委員。2015年12月から19年4月までロンドン支局長を務める。著書に『消えたヤルタ密約緊急電』(新潮選書・第22回山本七平賞)、『「諜報の神様」と呼ばれた男』(PHP研究所)、『イギリスの失敗』(PHP新書)、『新日英同盟』(白秋社)など。

関連する投稿


習近平主席の焦りと虚構の「日中紛争」|青山繁晴【2026年2月号】

習近平主席の焦りと虚構の「日中紛争」|青山繁晴【2026年2月号】

月刊Hanada2026年2月号に掲載の『習近平主席の焦りと虚構の「日中紛争」|青山繁晴【2026年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【現代中国残酷物語 拡大版】香港大火災は中国式大人災だ|福島香織【2026年2月号】

【現代中国残酷物語 拡大版】香港大火災は中国式大人災だ|福島香織【2026年2月号】

月刊Hanada2026年2月号に掲載の『【現代中国残酷物語 拡大版】香港大火災は中国式大人災だ|福島香織【2026年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


中国軍機レーダー照射事件 三つの問題点|織田邦男【2026年2月号】

中国軍機レーダー照射事件 三つの問題点|織田邦男【2026年2月号】

月刊Hanada2026年2月号に掲載の『中国軍機レーダー照射事件 三つの問題点|織田邦男【2026年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


日本人だけが知らない「新型コロナ起源説」世界の常識|掛谷英紀

日本人だけが知らない「新型コロナ起源説」世界の常識|掛谷英紀

新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所で作られ、流出したものであるという見解は、世界ではほぼ定説になっている。ところが、なぜか日本ではこの“世界の常識”が全く通じない。「新型コロナウイルス研究所起源」をめぐる深い闇。


中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】

中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『中国を利するだけだ!「習近平失脚説」詐術の構造|遠藤誉【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


最新の投稿


【安倍元総理暗殺事件 裁判傍聴記②】山上が語った安倍元総理襲撃の理由|楊井人文【2026年2月号】

【安倍元総理暗殺事件 裁判傍聴記②】山上が語った安倍元総理襲撃の理由|楊井人文【2026年2月号】

月刊Hanada2026年2月号に掲載の『【安倍元総理暗殺事件 裁判傍聴記②】山上が語った安倍元総理襲撃の理由|楊井人文【2026年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


「高市メタル外交」世界を動かす|谷本真由美【2026年2月号】

「高市メタル外交」世界を動かす|谷本真由美【2026年2月号】

月刊Hanada2026年2月号に掲載の『「高市メタル外交」世界を動かす|谷本真由美【2026年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】珍しいコメンテーター同士のバトル|藤原かずえ

【今週のサンモニ】珍しいコメンテーター同士のバトル|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


習近平主席の焦りと虚構の「日中紛争」|青山繁晴【2026年2月号】

習近平主席の焦りと虚構の「日中紛争」|青山繁晴【2026年2月号】

月刊Hanada2026年2月号に掲載の『習近平主席の焦りと虚構の「日中紛争」|青山繁晴【2026年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】ベネズエラ国民「私たちを見捨てないで!」 トランプがマドゥロ拘束に動くまで  外山尚之『ポピュリズム大国 南米』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ベネズエラ国民「私たちを見捨てないで!」 トランプがマドゥロ拘束に動くまで 外山尚之『ポピュリズム大国 南米』(日本経済新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!