この本、400ページ超で「モリ」と「カケ」両方を扱っているのですが、今回は、『月刊Hanada2018年9月号』の小川榮太郎さん×籠池佳茂さんのスクープと連動して、主に「森友問題」に関する記述に絞ってご紹介したいと思います。
帯の文字が輝かしいですね。〈ゆがめられた〝この国の形〟〉〈独自取材で次々と明るみに出た〝疑惑〟に迫る〉。いよいよ朝日新聞が「モリカケ」を総括するのか、と楽しみに読み始めたのですが、どうも様子がおかしい。
森友学園問題は大阪で始まり、永田町中枢へと飛び火していくため、本書には豊中支局の社会部記者から東京の政治部記者まで、多くの朝日新聞記者が実名で登場します。
それはいいのですが、記者の紹介文がいちいち鼻につくんですね。
たとえば大阪社会部、豊中支局の吉村治彦支局長。
〈吉村は2000年に朝日新聞社に入社した。中国地方や九州地方の総局を経て14年に大阪社会部員となり、豊中支局をまかせられた……(各地域での活躍と功績が続くが、長いので割愛)……久しぶりの故郷に、張り切る気持ちがみなぎっていた〉
……必要ですか? この記述。
本書で詳細な報道と取材の経過が分かるのはありがたいものの、合間合間に「誰それは天井を仰いだ」だの「慌ててリュックに取材道具を詰め込み、タクシーに飛び乗った」だの「帰宅後もなかなか寝付けなかった」だのという「僕たち頑張って取材してますッ!」系の描写が差し挟まれます。
要するにこの本、むしろ本題は副題の方でして、「スクープの現場」、そのなかでも「現場で頑張る僕たち」が主役。読み切るにはそれなりの精神力、忍耐力が必要です。