トランプを弾圧した第4の権力|山岡鉄秀

トランプを弾圧した第4の権力|山岡鉄秀

トランプは負けた――。だが、米国の主流メディアはトランプに勝ったと言えるのだろうか。客観的で公正な報道姿勢などかなぐり捨て、トランプに対する悪意に満ちた報道に溢れかえった米国メディアは、残念ながら、「死んだ」と言わざるを得ない。日米メディアの報道しない自由、言論の自由を侵害したSNS、「ファクト」を殺した「第4の権力」に迫る!


産経新聞の黒瀬悦成ワシントン支局長もワシントン・ポストの記事をそのまま報道した。実際の会話を自分で確認したのだろうか。ワシントン・ポストを訳すだけなら、莫大な費用をかけてワシントンDCに特派員を置く意味がない。現地でしかできない取材を行い、独自の視点を紹介してこそ意味がある。
 
今回は自分で音声を検証したから真相がわかった。しかし、そもそも実際の会話がネット上に存在するべきではない。なぜ存在するのか。その理由はなんと、ラフェンスパーガー州務長官が勝手に録音してワシントン・ポストに渡したというのだ。
 
事実ならば、重大なコンプライアンス違反だ。トランプ側から漏れることはあり得ないので、ジョージア州側から漏れたことは間違いないだろう。当然ながら、大統領と州務長官の会話は極秘事項だ。トランプはすでにラフェンスパーガー州務長官を提訴したという。
 
さらに驚くべきことが独立系メディアによって報道された。ラフェンスパーガーは2015年の選挙で当選しているのだが、接戦を制するために、中華系コミュニティに支持を懇願。100票でいいから自分に入れてくれと頼みこんだのだ。
 
中華系コミュニティがこれを受けて支持することを決めたと地元の中国語新聞が報じている。また、記者が代理で不在者投票用紙を取り寄せるので、各自記入して送付するようにとまで書いている。ジョージア州では本人以外が不在者投票用紙を取り寄せるのは違法だ。
 
この中国語新聞は統一戦線工作部と密接に繋がっていることがわかっている。ラフェンスパーガーは結果どうなったか。159票差で勝利している。つまりはそういうことなのだ。この程度の分析は日本にいてもできる。
 
いま、米国で起きていることは極めて深刻であり、自由民主主義、言論、思想の自由が脅威に晒されている。ジョージ・オーウエルの小説『1984』が米国で現実になろうとしている。主流メディアは完全に支配されてしまったようだ。

言論の自由を侵害するSNS

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旧来の主流メディアだけではない。
明らかに異常で看過できないのが、Facebookやツイッターに代表されるSNSだ。新聞社や出版社が独自の政治的視点を持って主張し得るのに対し、プラットフォームと呼ばれるSNSは政治的観点から検閲を行うべきではない。
 
しかしFacebookもツイッターもその常識的前提を完全に無視し、トランプの投稿を徹底的に検閲した。トランプのツイートには必ず「この主張は反論されている」というメッセージを付け、「いいね」を押そうとすると、「他人と共有する前に他の意見もみましょう」と言われ、仕方なくクリックするとバイデンとハリスの写真が飛び出したりした。信じられない偏向ぶりだ。
 
さらに、1月6日の選挙人投票の開票が終わり、バイデンの勝利が認定されると、群衆の議事堂乱入事件を口実にFacebookもツイッターもトランプのアカウントを凍結してしまった。民間企業が一方的に国家元首の発信を封じる挙に出たわけである。
 
言論統制はそれにとどまらない。グーグルやアップルは、保守派が避難先にしていた新興SNS「パーラー」のアプリを それぞれのストアから削除した。また、アマゾンは一方的にパーラーに対するサーバーホスティングサービスを停止した。
 
これに対しパーラーはアマゾンを提訴。パーラーは「アマゾンによるアクセス遮断はパーラーの競合相手であるツイッターを支援する行為であり、独占禁止法違反だ」と訴えたが、1月22日、裁判所はこの訴えを棄却した。
 
米国でここまでなり振りかまわない露骨な言論弾圧が行われるとは、予想を凌駕するものだった。逆に言えば、反トランプ陣営が全体主義を志向する勢力であることが如実に示されたということでもある。
 
ちなみに、Facebookのザッカーバーグの異様なまでの親中ぶりは以前から知られていた。ベトナム華僑の血を引く女性を妻に持つザッカーバーグは、習近平に娘の名付け親になって欲しいと懇願し(断られたようだが)、スモッグに煙る北京でマスクなしでジョギングをして環境改善をアピールし、習近平の著書『the governance of china(中国の統治)』を絶賛して社員に読むように勧め、自ら中国語を学習して中国語の動画メッセージまで配信した。
 
このザッカーバーグが執拗にトランプを狙い撃ちしたことに説明の必要はないだろう。
 
冷戦終了から三十年、自由民主主義が新たに台頭した全体主義から挑戦を受け、自由民主主義の旗頭であるべき米国が内部から崩壊するまさかの事態に我々は直面している。このような危機的な状況でこそ、本来のジャーナリズムの真価が試される。

すべてを陰謀論で片付けようとするのは危険な極左全体主義だ。

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