トランプを弾圧した第4の権力|山岡鉄秀

トランプを弾圧した第4の権力|山岡鉄秀

トランプは負けた――。だが、米国の主流メディアはトランプに勝ったと言えるのだろうか。客観的で公正な報道姿勢などかなぐり捨て、トランプに対する悪意に満ちた報道に溢れかえった米国メディアは、残念ながら、「死んだ」と言わざるを得ない。日米メディアの報道しない自由、言論の自由を侵害したSNS、「ファクト」を殺した「第4の権力」に迫る!


米国メディアの悪意と日本メディアの無能

Getty logo

トランプ大統領の顧問弁護士であり、元ニューヨーク市長のジュリアーニをCNN社長が「便利な馬鹿」とレッテル貼りし、彼に支持される大統領がいかに異常かを印象付ける方向で記事を出そうと話している音声がリークされた――。
 
米国の主流メディアは死んだ、と言われても仕方がないだろう。客観的で公正な報道姿勢などかなぐり捨て、トランプ大統領に対する悪意に満ちた報道が溢れかえった。
 
一方、日本のメディアはどうだったか。
欧米主流メディアの報道を訳すだけで、ジャーナリズムの体をなしていないと断罪せざるを得ない。
 
特に驚き、失望したのが、ワシントン・ポストが「トランプ大統領がジョージア州のラフェンスパーガー州務長官に電話で投票結果の改ざんをするように圧力をかけた」という記事(1月3日)を日本のメディアがそのまま訳して報道したことだった。
 
私はこの記事を見て、すぐに音源を探し、トランプ大統領とラフェンスパーガー州務長官の間で交わされた1時間ばかりの会話を自分で聞いて確認した。そして、改めてワシントン・ポストの悪意と、日本のメディアの無能ぶりに怒りを覚えた。
 
トランプ大統領はジョージア州で確認された様々な不正行為の具体例を挙げ、それらに係る票の総数はバイデンとの得票差である1万1779票を遥かに上回り、1万2000票でも戻ってくれば十分に逆転できると繰り返し述べているが、投票結果を改ざんしろとは決して言っていない。公正に調査すれば容易に逆転できるはずだと言っているだけだ。
 
一方、ラフェンスパーガー州務長官の対応は極めて無礼であり、ぞんざいだった。トランプが何を聞いても、「調査したら問題なかった」と言うばかりで、詳細に答えようとはしない。

「ジョージアでは少なくとも5000人もの死者が投票している。死亡通知書を調べたんだ」
「大統領、こちらで調べたら、投票した死者は2人だけでした」
 
こんな調子だ。
話題になった監視カメラが捉えた開票スタッフの不審な行動もトランプが言及した。

水道管破裂があったという虚偽の理由で選挙監視人が帰宅させられた後も開票作業が続けられ、テーブルの下から票が詰まったスーツケースが取り出されたり、スタッフが同じ票を何度もスキャンしたりしている様子が映っていた件である。
 
これについてラフェンスパーガー州務長官は一言、「調べた結果、同じ票を何度もスキャンした事実はないと結論しました」とだけ答え、「なぜ監視人が不在のまま作業しているのか?」というトランプの質問には一切答えなかった。
 
実際の会話はこのようなものだったが、ワシントン・ポストはあたかもトランプが理不尽な要求を繰り返し、投票結果の改ざんをするよう圧力をかけたという印象操作を行った。

背後に見え隠れする中国の影

Getty logo

関連する投稿


米で「慰安婦≠性奴隷」論文を削除|西岡力

米で「慰安婦≠性奴隷」論文を削除|西岡力

米国に拠点を置く国際問題専門ネット雑誌が、戦時中の慰安婦は性奴隷でなかったと主張する韓国人学者の論文をいったん掲載しながら、すぐに削除して謝罪し、性奴隷説に立つ別の学者の論文を掲載した。米ハーバード大学のラムザイヤー教授が学術誌の論文撤回を要求された出来事に続いて、慰安婦に関する今年2度目の学問の自由の侵害事件だ。


米ミサイルの日本配備へ活発な議論を期待する|太田文雄

米ミサイルの日本配備へ活発な議論を期待する|太田文雄

米国は対中抑止力として中距離戦力を配備したいと考えているが、それを受け入れてくれる国があるかが問題である。北東アジアから東南アジアにかけての配備先候補は、日本しかない。


最低でも外交的ボイコットを―北京五輪|島田洋一

最低でも外交的ボイコットを―北京五輪|島田洋一

ボイコットと言うと「選手たちが可哀そう」という声が直ちに起きるが、「貴賓席」に陣取る習近平氏への「敬礼」を強いることこそ、選手たちにとって「可哀そう」だろう。有志諸国は少なくとも、選手団の行進を含め、開会式への不参加を決めるべきだ。


核先制不使用を米に宣言させるな|太田文雄

核先制不使用を米に宣言させるな|太田文雄

岸田総理、核廃絶の理想を掲げるのはいい。しかし、日本が究極の安全を米国の核抑止力に頼りながら、非核三原則の下で核兵器の日本国内への持ち込みさえ認めないのは明らかに矛盾している。


谷口智彦のこの一冊|兼原信克『安全保障戦略』

谷口智彦のこの一冊|兼原信克『安全保障戦略』

安倍晋三前総理のスピーチライターを務めた慶応義塾大学大学院教授の谷口智彦氏が選ぶ珠玉の一冊!


最新の投稿


参院選も「立憲共産党」なら、自民は危ない!|和田政宗

参院選も「立憲共産党」なら、自民は危ない!|和田政宗

「日本の政治を変える道は野党共闘しかない」と豪語する日本共産党の志位和夫委員長。この発言を「往生際が悪い」という一言で片づけていいのだろうか。昨年の衆院選では「立憲共産党」と揶揄され、立憲民主党、共産党ともに議席を減らしたが、野党共闘は本当に失敗だったのか。(写真提供/時事)


【読書亡羊】米議会襲撃事件の裏と日米の政治家の差 ボブ・ウッドワード、ロバート・コスタ『PERIL 危機』(日本経済新聞出版社)

【読書亡羊】米議会襲撃事件の裏と日米の政治家の差 ボブ・ウッドワード、ロバート・コスタ『PERIL 危機』(日本経済新聞出版社)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


日本に必要な攻撃能力の構築|島田洋一

日本に必要な攻撃能力の構築|島田洋一

日本は専守防衛の枠を捨て、日本を攻撃すれば自らの司令系統中枢も破壊されると思わせるだけの、小規模ながら残存性の高い抑止力を構築していかねばならない。同じ発想に立つ英国を、誰も「無責任な軍国主義国家」とは呼ばない。


岸田首相は世界に貢献する責任を果たせ|櫻井よしこ

岸田首相は世界に貢献する責任を果たせ|櫻井よしこ

国益に関わる重要事であっても、摩擦を起こしかねない案件には一切手をつけず、7月の選挙を乗り切りたい、政権の長寿を実現したい、というのが岸田首相の考え方か。有事のいま、それは間違いだ。


一票に格差があってどこが悪い!|深澤成壽

一票に格差があってどこが悪い!|深澤成壽

選挙の度に問題となっている「一票の格差」。昨年10月の参院選もこれをもって違憲だとする訴訟が各地で相次いでいる。しかし、本当に「一票の格差」は問題なのか? 改めて考え直してみると……。(初出:2013年5月号)(本稿は著者の考えに基づき、旧仮名遣いとなっています)