メディアが発信し続ける福島への風評被害 2|渡辺康平

メディアが発信し続ける福島への風評被害 2|渡辺康平

福島に放射能の「風評被害」をもたらすのは、新聞だけではありません。昨年8月6日に放送されたテレビ朝日の「ザ・スクープスペシャル」の特別番組では、当初「ビキニ事件63年目の真実~フクシマの未来予想図~」というタイトルになっていました。


このような、あたかも福島を「死の地」の如く描く学者・評論家・ジャーナリスト・政治家たちは、原発事故発生当初から今日にいたるまで後を絶ちません。彼らは「福島県には人が住めない」という暴言を吐き、「あと○年で日本に住めなくなる」といったデマを拡散してきました。

前回の参議院選挙に社民党公認で立候補した増山麗奈氏は、平成23年11月30日のツイートで「てめえら豚はうすぎたねえプルトニウム米でも喰ってな!」と発信。このつぶやきによって増山氏のアカウントだけではなく、公認を出した社民党公式アカウントも炎上。結局、増山氏、社民党ともに発言についての謝罪と撤回はなく、増山候補は落選しました。

参議院議員の山本太郎氏は、議員当選前の原発事故発生2カ月後に、福島県内の避難地域ではない地域から住民が避難しないことを「大人の無理心中に子供を付き合わせる」ことと暴言を吐き、事故から8ヶ月後、山本氏は福島県内で行われる駅伝をについて次のように否定しました。

「駅伝やって被曝する場所で生活なんてありえない。その狂気を、そこに暮らす人々に押し付けているのが、国であり、声を上げない日本人。駅伝阻止に対しデリカシー、思いやりがないと寝呆けたすり替えをする貴方。そこで暮らす人々を本気で憂うのなら、避難の権利を勝ち取る運動に参加するのが筋」

山本氏の発言は選挙前であり私人ではありますが、福島県民の感情としては、決して許される発言ではありません。

何の謝罪も反省もない

現在ではこうしたあからさまな「福島差別」ともいえるデマや暴言は息をひそめていますが、デマ・暴言を発信してきた当事者たちは何の謝罪も反省もなく、いまでものうのうと言論活動、メディア出演をしています。

特に、メディアへ出演で今もなお活躍中の中部大学教授(特任教授)の武田邦彦氏は、平成24年4月27日の自身のblogにて「あと3年・・・日本に住めなくなる日」というタイトルの記事を掲載しています。武田氏は当該blogに以下のような文章を書いています。

「これから計算しますと、若干の内部被曝なども加味して、三重県の外部からの被曝が1年5ミリになるのは、2012年1月から3年4カ月後となります。つまり、2015年4月1日になると、三重県には住めなくなるという計算結果です」

「福島原発から漏れた量が80京ベクレルであること、これは日本に拡散したら日本が住めなくなる数字であることを認識し、政府、自治体、電力は本腰になって日本列島を汚染されないように全力で取り組んでください」

武田氏のblogで「住めなくなる」とされた2015年から既に3年経過しています。武田氏の言う「日本が住めなくなる日」はいつ訪れるのでしょうか。また最近、武田氏は保守系の評論家として様々な言論活動を行われていますが、こうした過去の言論を知ると、果たして本当に信用に足りえる人物なのか私は疑問を持ちます。

福島県民は負けない

8年目を迎えた2018年3月11日は、財務省の「森友文書改ざん疑惑」と重なり、毎年恒例の「被災地報道」は下火だった印象でした。しかし、誤った形で広まった「放射能デマ」は、今なお被災者を苦しめています。


昨年、民間有志によるウェブサイト「ファクトチェック福島」が立ち上がりました。このサイトはメディアや評論家による「デマ・誤報」「印象操作」等に対抗するため民間有志によるウェブサイトです。


ファクトチェック福島は、「福島関連のデマや報道被害などの情報収集」、「科学的知見による基礎知識の共有」、「科学的知見に対する専門家による記事の寄稿」によって福島に関連するデマを撲滅することを目的としています。


私たち福島県民はメディアのデマに負けることなくリアルの福島を発信し続けます。(おわり)

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