メディアが発信し続ける福島への風評被害 2|渡辺康平

メディアが発信し続ける福島への風評被害 2|渡辺康平

福島に放射能の「風評被害」をもたらすのは、新聞だけではありません。昨年8月6日に放送されたテレビ朝日の「ザ・スクープスペシャル」の特別番組では、当初「ビキニ事件63年目の真実~フクシマの未来予想図~」というタイトルになっていました。


果たしてテレビ朝日はどのような意図でこの番組を制作したのでしょうか。福島の復興や、放射能に関する情報の是正に携わってきたフリーランスライターの林智裕氏はテレビ朝日の番組の意図について次のように分析しています。

「今回の番組はそうした事実を、たとえば誰かの主義主張やメッセージを補強する、あるいは悲劇のドラマを作るというような、『別の何か』に利用するための『踏み台』にしているのではないか、という印象が拭えませんでした。炎上する以前は、もしかすると、福島もその『踏み台』の1つにされそうになっていたのかもしれません」

このような、「デマ・差別」報道を行うメディアは朝日新聞に限りません。

たとえば『女性自身』(光文社)や、『週刊プレイボーイ』(集英社)。この2誌にも事実無根のデマ記事が掲載されました。

それは平成27年10月10日、NPO法人「ハッピーロードネット」が取り組む「みんなでやっぺ!!きれいな6国」という国道清掃イベントに関するものです。

このイベント開催時には、「狂気の沙汰」「人殺し」「殺してやる」などの誹謗中傷・脅迫が1000件以上寄せられました。「放射能線量の高いところでなぜイベント開催するのか。やめろ」という趣旨です。

この際、『女性自身』には「子供がセシウムを吸い込む”被ばく”イベントが福島で決行された!」という記事が、また『週刊プレイボーイ』には「地元高校生が強制参加? 放射能に汚された福島“6国”清掃活動は美談でいいのか」という事実無根のデマ記事が掲載されました。

イベント主催者であるハッピーロードネット代表の西本由美子氏のインタビューが、作家の川口マーン惠美氏著書『復興の日本人論 誰も書かなかった福島』(グッドブックス)に掲載されています。

〈西本氏「記者たちが来て、私に取材しました。あとで見たら、写真は子供たちがゴミを拾っている写真だけれど、私のコメントは使わず、勝手に違うことを書いていました。すでに書くことは決まっていたのだと思います。

2年目には記者の人たちに尋ねました。『私の話すことがちゃんと記事になるのですか』と。『なります』と言うから一生懸命しゃべりましたが、記事では違う表現になっていました。抗議したら、彼らはなんと言ったと思いますか?

『西本さんが言わんとする気持ちはよくわかるけど、僕たちもこれで食べていかなければならないのです』と。子供たちがひどい目に遭っている、苦しんでいると、お涙ちょうだいでないといけないのでしょう。」

「活動に参加した子供たちが可哀想でした。反対意見があるのはわかりますが、私たちは実際にこの地で生活しているんです。故郷を思う子供たちの希望を壊すようなことはしてほしくない。抗議の電話をかけてくる人の中には『お前らがニコニコ笑うのは許せない』と言った人もいました」〉

Getty logo

明らかな「福島差別」

関連する投稿


新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

新総理総裁が直ちにすべきこと|島田洋一

とるべき財政政策とエネルギー政策を、アメリカの動きを参照しつつ検討する。自民党総裁候補者たちは「世界の潮流」を本当に理解しているのだろうか?


なぜ政府は南海トラフ「巨大地震注意」を出したのか?|和田政宗

なぜ政府は南海トラフ「巨大地震注意」を出したのか?|和田政宗

初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」に対して否定的な意見も多数あったが、政府が臨時情報を出したのは至極真っ当なことであった。(サムネイルは気象庁HPより)


南海トラフ「巨大地震注意」は至極真っ当な発表だ|和田政宗

南海トラフ「巨大地震注意」は至極真っ当な発表だ|和田政宗

8月8日、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。「国民の不安を煽るだけ」という否定的な意見もあるが、はたして本当にそうなのか。この情報をどう見ればよいか、解説する。(サムネイルは気象庁ホームページより)


災害から命を守るために憲法改正が必要だ|和田政宗

災害から命を守るために憲法改正が必要だ|和田政宗

私は、東日本大震災の津波で救えなかった命への後悔から、その後、大学院で津波避難についての修士論文をまとめた。国会議員に立候補したのも震災復興を成し遂げるという意志からであった。だが、災害などの緊急時に対応できる憲法に現行憲法はなっていない――。


自衛隊の災害派遣経費は自腹でいいのか?|小笠原理恵

自衛隊の災害派遣経費は自腹でいいのか?|小笠原理恵

「休暇中に帰省するのは許可するけど、何かあったときは自腹で帰ってきてねというスタンスです」と自衛隊幹部。被災地で活躍する自衛隊に多くの国民が感謝しているが、自衛隊では災害派遣活動中でも自腹負担が多数みられる――。(サムネイルは「陸上自衛隊 中部方面隊」Xより)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。