メディアが発信し続ける福島への風評被害 1|渡辺康平

メディアが発信し続ける福島への風評被害 1|渡辺康平

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から平成30年3月11日で丸7年を迎えました。「もう7年」とみるか「まだ7年」と受け止めるか、立場や環境によって受け止め方は様々でしょう。 大震災と原発事故が発生した当時を思い返すと、「福島県には人が住めなくなる」「内部被ばくによる癌が増える」といった無責任な情報が、評論家や自称科学者たちによって、メディアを通じて垂れ流されていました。


主婦を装った活動家

この記事では「原発事故との関係があるかは不明」と前置きをしながらも「東京都町田市の主婦有馬理恵のケース。6歳になる男の子が原発事故後、4か月の間に鼻血が10回以上出た」としています。

この記事内容では「福島県から遠く離れた東京都町田市で放射性物質を起因とした健康被害が起きている」と読者が捉えるのは普通ではないでしょうか。

しかし「放射性物質による健康被害=鼻血」については、平成26年5月13日に環境省環境保健部が見解を発表しています。

環境省・放射性物質対策に関する不安の声について(一部抜粋)

国連(原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR・アンスケア)がこれまでの知見に基づき公表した「2011年東日本大震災と津波に伴う原発事故による放射線のレベルと影響評価報告書」(平成26年4月2日公表)によれば、住民への健康被害について、「確定的影響は認められない」とされています。

東京電力福島第一原子力発電所の事故の放射性被ばくが原因で、住民に鼻血が多発しているとは考えられません〉

つまり、国連科学委員会による影響評価報告書では「原発事故を起因とした住民への健康被害は認められない」とはっきりと明記されています。

また、引用した記事ではいかにも一般の子を持つ母親のように紹介されている有馬理恵氏がどのような人物なのかネット上で調べてみると、まず初めに「劇団俳優座」の劇団員であることが分かりました。

さらに法学館憲法研究所のインタビューでは、自信の生い立ちや花岡事件を扱った水上勉作の「釈迦内柩唄」をライフワークとして「差別と戦争をなくすために」活動しているということ。そのほかにも、有馬氏には共産党系の反戦団体である「日本平和委員会理事」や「子どもと未来をつなぐ会・町田・健康調査担当」という肩書、さらに「さようなら原発・町田の会共同代表」という肩書が出てきます。

さらに「女優・有馬理恵さんと行く 韓国『慰安婦』問題をかんがえる 4日間」というナヌムの家を訪問する旅行企画まで出てきました。

こうした人物を私は「左翼活動家」というべきではないかと思います。朝日新聞はプロメテウスの罠でこの人物を「一般の主婦」として登場させ、「福島県から遠く離れた東京都町田市で放射性物質を起因とした健康被害が起きている」という印象操作を行ったといえます。

朝日・本田雅和記者の「罪」

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