また、「プロメテウスの罠」では「希望の牧場」というシリーズがありました。「希望の牧場」は福島第一原発から北西に14キロ、南相馬市小高区と浪江町の境にある農場を経営する畜産農家の吉沢正巳氏を中心に取り上げた記事です。
避難指示後も町に住み続け、牛約330頭の世話をしながら、国と東電に抗議を続ける吉沢氏の活動を取り上げ、全34回にわたる長期連載記事でした。
「希望の牧場」はドキュメンタリー映画や絵本として取り上げられ、吉沢氏は脱原発運動の象徴の1人として注目を集めた人物です。
吉沢氏は千葉県四街道生まれで、千葉の佐倉高校時代、近隣の三里塚で、成田空港建設反対闘争に参加し、東京農大では自治会委員長も務めたという筋金入りの人物です。
「プロメテウスの罠」では、沖縄の反米軍基地運動と連帯するため、牛をかたどったオブジェをトレーラーに乗せて、沖縄行脚を実施しています。吉沢氏は米軍基地新設反対運動のテント村で村長の安次富浩氏と会談しています。
吉沢氏の経歴と行動は、「プロメテウスの罠」の記事を読んでいても「普通の畜産農家ではない」ことが分かります。朝日新聞は全34回もの連載記事で、なぜ1人の活動家にスポットライトを当ててきたのでしょうか。
この記事の署名記者はあの「本田雅和」記者です。本田雅和記者は「女性国際戦犯法廷」を放送したNHK番組が安倍晋三氏、中川昭一氏によって「改変された」と一方的な偏向報道を行ったことで名をはせた人物です。本田氏は東日本大震災の翌年から朝日新聞福島総局、平成25年に南相馬支局長に就任しています。
「プロメテウスの罠」の中で、本田氏が取り上げてきた人々のすべてが「活動家」であるというわけではありません。しかし朝日新聞の記事の書き方は反原発運動や反基地活動などを日常的に行う人物を、「一般市民」として取り上げている。この手法は印象操作ではないでしょうか。
反原発運動に関わり、シュプレヒコールを上げながら、デモ行進をする人物たちがこれほど多く取り上げられるのは納得できないのです。
また、本田雅和氏は自身の著書『原発に抗う「プロメテウスの罠」で問うたこと』(緑風出版)で、「辺境で質素に暮らす人々(9ページ)」「原発に踏みにじられた辺境の民(198ページ)」と「辺境」という言葉を使っています。福島県の浜通り地方の相双地区が「辺境」であるという意識が本田氏には明確にあり、私たち福島県民にとって「辺境」という言葉は決して納得できない差別的な表現です。
差別を憎むと言いながら、福島県内の人々を「辺境の民」と表現する本田氏の根底には、福島県民に対する差別的な意識があるのではないかと推測します。(つづく)
著者略歴
須賀川市議会議員。1985年、福島県須賀川市生まれ。高校卒業後、航空自衛隊に入隊。2012年、航空自衛隊退官後、経済評論家秘書、国会議員秘書、福島県議会議員秘書を経て、2015年8月、須賀川市議会議員に初当選。