6月30日、中国では全人代常務委員会が「香港国家安全維持法案」を全会一致で可決。7月1日、同法が施行された。「一国二制度」により、本土では制限されている自由が保障された香港に対し、本土と同様に自由に制限をかけて、反政府抗議活動を抑えるのが目的だ。
6月30日(現地時間)、ジュネーブで開かれた国連人権理事会で、欧州諸国をはじめ、オーストラリア、カナダ、日本など、自由と民主主義を尊ぶ西側二十七カ国を代表して、イギリス大使が「我々は中国と香港の政府が同法の施行を再考することを求める」と訴えた(アメリカは2018年に国連人権理事会を脱退)。
しかし、ここに韓国は加わらなかった。韓国外交部は「韓国政府は諸般の状況を考慮し、共同発言には参加しなかった」 「香港に関するこれまでの立場などを総合的に考慮した」とし、理由を具体的に説明することはなかったが、中国の顔色を窺い、その意志に背かなかったとみられる。
韓国は、中国の「目に見えぬ」ならぬ、露骨な「目に見える」侵略によって、すっかり骨抜きにされてしまったようだ。モンスターの大きな口に食いつかれ、バキバキと音を立てて咀嚼され、み込まれていっている。私たちはこの現実を直視すると同時に、日本も同様の危機にあることを自覚しなければならない。
著者略歴
1958年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1989年から96年までソウルで暮らし、延世大学延世語学院などで日本語を教えながら、韓国の言葉、文化、社会事情を学ぶ。帰国後、韓国語の翻訳者として、主に各テレビ局の韓国・北朝鮮報道で、翻訳や取材、リサーチに携わる。