憲法改正の決定権は主権者国民にある。しかし、国会が憲法改正の発議をしなければ、国民投票を行うことができない。これは国民の主権行使の機会を奪うものだ。
その責任は、不甲斐ない与党、自民党にもある。憲法改正を公約に掲げ、国政選挙で何度も大勝させてもらいながら、一向に国民の期待に応えようとしない自民党に対しては、我慢にも限界がある。反対派は改憲を阻止するため文字どおり必死だ。これに対して自民党は圧倒的多数の勢力を誇りながら、戦わずして敗北する気か。
コロナウイルスの蔓延(まんえん)という国難の中、第2波、第3波のウイルス襲来に備えて、憲法審査会は緊急事態法制の整備や憲法改正に向けた論議を速やかに開始すべきだ。
衆参両院の審査会規程によれば、会長は国会の閉会中であれ、日時を定めて審査会を開催することができ(8条、9条1項)、委員の3分の1以上から要求があれば審査会を開かなければならない(9条2項)。
それゆえ、両院の憲法審査会はその責務を果たすべく、毎週でも改憲論議を行い、これまでの遅れを取り戻すべきだ。(2020.06.15国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
国基研理事・国士舘大学特任教授。1946年静岡県生まれ。京都大学大学院法学研究科修士課程修了。愛媛大学法文学部教授、日本大学法学部教授。国士舘大学大学院客員教授などを歴任。法学博士。比較憲法学会副理事長、憲法学会常務理事、『産経新聞』「正論」執筆メンバー。著書に『憲法の常識 常識の憲法』、『憲法と日本の再生』、『靖国と憲法』、『憲法と政教分離』など多数。