「表現の不自由展」の不都合な真実|河村たかし×門田隆将

「表現の不自由展」の不都合な真実|河村たかし×門田隆将

「あいちトリエンナーレ2019」の負担金をめぐり、愛知県の大村秀章知事が会長を務める芸術祭実行委員会は名古屋市を相手取り約3300万円の支払いを求めて名古屋地裁に提訴した。河村たかし市長は、徹底抗戦の構えを見せている。 「表現の不自由展」をめぐる問題の本質とは何だったのか――。 問題が再燃しているいまこそ読みたい、月刊『Hanada』2019年12月号に掲載された河村市長と門田隆将氏の対談を特別公開!


朝日の黒い意図

門田 しかし、河村さんがいくら記者会見で昭和天皇の肖像を燃やす作品について報じてくれと言っても、新聞は書きません。「一部の保守派が少女像に反発し、表現の自由を圧迫している」という図式で報じたいから「少女像など」と書いて矮小化するのです。
 
朝日はさすがに触れないとまずいと思ったのでしょう、「昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品」(太字編集部)と表現していますが、これもひどい。真実を伝えていません。

「燃える」というと、普通の人はきっと昭和天皇の肖像が“何か”があって「燃えている」のだろうと想像します。そこに朝日の黒い意図があります。何かがあって「燃えている」のだったら怒る必要はないからです。
 
しかし、実際は「燃える」などというものではなく、「昭和天皇の肖像をバーナーで焼き、燃え残りを足で踏みつけている」んですよ。しかし、そのことは決して書かない。
 
なぜかといえば、作品群の真実を報じたら、問題の「不自由展」に展示されているものがいかに「表現の自由」を逸脱しているかがバレてしまうからです。

河村 あの作品の意図は天皇への侮辱ではないという人がいますが、本当にそうでしょうか。燃やすだけならマッチでもいいはずなのに、あえてバーナーを使っている。

しかも、最後には燃え残りを踏みつけるわけで、そこに「暴力性」 「侮辱性」を感じるのは私だけではないはずです。

門田 NHKもひどかったですね。河村さんが座り込みをしたときに、「日本国民に問う! 陛下への侮辱を許すのか!」と書いたプラカードを掲げていました。

しかし、NHKは報道するとき、そのプラカードが映らないように報道した。真実を報じるという報道機関としての使命を放棄したとしか言いようがありません。

「こういう表現はやめてくれ」と言ったことは一回もない

河村 マスコミが報じない、今回の問題のポイントは4つあります。

1つは、会場となっている愛知芸術文化センターが愛知県のものであることです。会場を貸し出す時には規定があって、たとえば東京都美術館であれば、特定の宗教、政治に偏らないこと、と定めています。
愛知県の場合も「多くの人が不快の念を抱かないこと」と定めており、「不自由展」はそれに反している。
 
2つめは、名古屋市主催であること。主催するとはどういうことか。「この催しは正しい、いいものである」という“お墨付き”を与えることになるのです。

たとえば名古屋市には、さまざまな団体から後援してほしいと申込みがあります。なぜかと言えば、彼らは行政のお墨付きがほしいからです。
「うちの団体は知名度こそ低いが、催しには名古屋市のお墨付きをもらっている、しっかりした団体ですよ」と。
 
主催は後援よりも、もっと「お墨付き」「応援」の意味合いが強くなります。名古屋市主催で天皇陛下を侮辱するような作品を展示するということは、そういう行為を名古屋市が「いいことですよ」とお墨付きを与え、応援していると受け取られてしまう。
 
規模は違いますが、東京オリンピックで考えてみてください。開会式の日に行ったら、メインスタンドに慰安婦像や昭和天皇の肖像をバーナーで燃やす映像作品が飾ってあったとしたら、大問題になるでしょう。
それと同じですよ。
 
だから私は、津田さんや作家に「こういう表現はやめてくれ」と言ったことは一回もないんです。別に反政府、反皇室的な表現はしても構わない。ただ、名古屋市主催だと問題があるから、自分たちでお金を集めるなりして、どこか別の場所でやってほしいと言っているだけなのです。

門田 要するに公金、つまり税金によって展示されていることが問題なのです。

河村 それが3つめのポイントです。補助金の半分は名古屋市民の税金。もちろん、なかには反皇室、反政府的な思想の人もいるでしょうが、圧倒的多数は皇室に敬意を払っています。その多数の人たちの気持ち、「表現の自由」はどうなるのか。

関連する投稿


わが日本保守党と「4つの縦糸」|小坂英二

わが日本保守党と「4つの縦糸」|小坂英二

なぜ完全無所属から日本保守党結党メンバーの地方議員となったのか――小坂英二東京都荒川区議会議員がはじめて綴った日本保守党と祖国への熱き想い。


日本保守党初陣の裏方日記|広沢一郎

日本保守党初陣の裏方日記|広沢一郎

日本保守党事務局次長の広沢一郎氏が日本保守党の初陣となった選挙戦の舞台裏をはじめて綴る。〈あれこれ探している時間がなかったので今回は私が2011年の県議選用に買った自転車を名古屋から運びました〉


わが日本保守党|広沢一郎(日本保守党事務局次長)

わが日本保守党|広沢一郎(日本保守党事務局次長)

昨今の政治状況が多くの日本人の心に危機感を抱かせ、「保守」の気持ちが高まっている。いま行動しなければ日本は失われた50年になってしまう。日本を豊かに、強くするため――縁の下の力持ち、日本保守党事務局次長、広沢一郎氏がはじめて綴った秘話に投票3日前の想いを緊急加筆。


【ファクトチェック最前線「特別編」】共同親権の核心を〝報道しない自由〟|新田哲史

【ファクトチェック最前線「特別編」】共同親権の核心を〝報道しない自由〟|新田哲史

虚偽事実にしろ、偏向報道にしろ、オモテに出ている〝ファクト〟は検証しやすい。しかし世の中には、メディアが存在をひた隠しにするファクトも。ネットでは「報道しない自由」と揶揄するが、最近筆者がその対象になっていると感じるのが共同親権の問題だ。


「共同親権」を潰す赤いネットワークと北朝鮮の家族法|池田良子

「共同親権」を潰す赤いネットワークと北朝鮮の家族法|池田良子

日本共産党や社民党に近い「赤いネットワーク」はなぜ、離婚後共同親権制に反対するのか。彼らの本当の目的は、「離婚後も男性による女性と子供の支配が継続することを断固阻止する」ことにある――。(画像は駒崎弘樹氏twitterより)


最新の投稿


【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。