学校閉鎖も先行している。
春節(旧正月)休みに入っていた2月2日、台湾政府教育部(文科省)は、同月10日までのところ24日まで延長する措置を命じた。2月20日には、今後は一斉休校は行わずに、教職員や生徒で感染者が1人出れば学級閉鎖、2人以上なら学校閉鎖との基準を改めた(安倍首相が一斉休校要請を行ったのはほぼ3週間遅れで、台湾が方針を変えたあとの2月27日だった)。
共働きの家庭などに配慮した対策も台湾では早かった。労働部(省)は1月22日には、労働者自身はもちろんのこと、発症した子供の世話のために、有給休暇の取得を可能とし、それを拒否した雇用者に対しては法に基づいて処罰するとした。
行政院(内閣)は2月13日、総合的な対策特措法「厳重特殊伝染性肺炎防治及困振興特別条例」案、および追加特別予算案600億台湾ドル(約2200億円)を作成、立法院が25日に可決した。日本が緊急対応策として計上した予算案は2700億円、人口比では台湾は日本の約4倍になる。ちなみにシンガポールは約5000億円規模で、人口比では日本の40倍を超える。
また、日本では実施されていないものとして、デマなどの「インフォデミック」への処罰と、医療関係者の6月までの出国禁止令(2月26日)が台湾では出ている。
世界が注目する若手天才大臣の活躍
マスク供給など台湾の対策は日本の国会やテレビでも話題となったが、特に注目を集めたのは、自身もプログラマーで起業家でもあるデジタル担当の政務委員(大臣)を務める唐鳳だった。
IQ180、38歳の若手天才大臣として知られる唐鳳(オードリー・タン)は、台湾各地の薬局のマスク在庫状況をデータ化し公開、それによって民間のエンジニアたちがボランティアで「マスク在庫マップ」などを次々と開発していった。
唐鳳は男性として生まれたが、女性に転換したトランスジェンダーであり、遺伝子鑑定でも性別は中間とされ、入閣時、性別欄には「無」と記した。子供のときからプログラミングで名を馳せ、15歳でIT企業を起こすなど、米誌『フォーリン・ポリシー』の「2019年のグローバル思想家100人」にも選出された世界が注目する若手政治家だ。