県民が失った額は2670億円
また、国との対立が続いた影響ということであれば、翁長県政とそれを引き継いだ玉城デニー県政の間に沖縄振興一括交付金が大幅に減額になったことも見逃せない。
いわゆるヒモ付きではなく、県や市町村が自由に使途を決めることができる一括交付金は、仲井眞元知事が国に認めさせた独自の制度で、仲井眞県政の最後の年の2014年度には1759億円あったが、2020年度予算では1014億円にまで減額した。この6年間で県民が失った額は、2670億円にもなる。
一括交付金の減額によって、市町村のなかには公園の整備など予定していた事業の中止に追い込まれたところもあり、暮らしに直結する影響が出ている。
大型会議施設も鉄道敷設計画も全く前進せず
先ほど指摘した那覇空港の第二滑走路も、それまで滑走路が1本しかなかったために空港の発着枠は限界ギリギリで、夕方の混雑時間帯は上空で飛行機が旋回して着陸の順番を待つことが常態化していたが、第二滑走路の完成で、発着枠はこれまでの1・8倍の24万回となった。
第二滑走路は当初、工期は7年とされていた。それを仲井眞元知事が在任中に菅義偉官房長官に直談判して、5年あまりに短縮させたのだ。観光振興には早期整備が欠かせないとの判断からで、第二滑走路の整備は仲井眞県政が残した最大の功績のひとつである。
では、翁長・玉城の両県政で、新たに大型の事業がスタートしただろうか。翁長県政は沖縄本島東海岸の与那原町での大型会議施設のMICEの建設を肝煎り事業として掲げていたが、未だに予算化のメドも立たない。仲井眞県政時代に検討作業が本格化していた本島を南北に循環する鉄道敷設計画の事業化も、まったく前進していない。
「新型コロナウイルスの感染が拡大するまでは、観光を牽引役に沖縄経済は絶好調でした。そのため、多くの県民は意識していませんが、新規の大型事業が翁長・玉城県政ではまったく進んでいません。将来を見越して新規事業を進めるのが行政というものです。いまの好景気は仲井眞県政時代の種まきが実を結んでいるわけですが、こんな調子では10年、20年先の沖縄はどうなるのか」(前出の県庁幹部)