深刻な子供の貧困率
ただ、ここ数年、沖縄の県民の間で、辺野古移設問題への関心が薄れてきているのも事実だ。沖縄県が昨年3月に公表した県民の意識調査では、県が重点的に取り組むべき施策として、これまで調査のたびにトップだった「米軍基地問題の解決促進」を抑えて新たにトップに挙げられたのは、「子供の貧困対策の推進」だった。2位を16ポイント近くも引き離してのトップである。
離婚率や一人あたりの県民所得、非正規雇用率といった指標が全国で最悪の沖縄県は、子供の貧困率も全国で最も高い。前知事の翁長雄志氏は在任中に、「基地問題に労力の8割から9割を割いている」と発言したが、そんな翁長氏や玉城デニー氏のもとで、基地問題ばかりフレームアップする県政が続くことへの不安感は高まっている。
単なるパフォーマンスで代替案を示さない
それは、知事を支えるはずの県職員とて同じことだ。
「辺野古関連の訴訟は、勝算がないのを承知でやっていて、単なるパフォーマンスと化していました。辺野古反対を言うばかりでなく代替案を示してもいいのではないかと思いますが、知事からはそうした指示が降りてくるわけでもない。辺野古移設問題を担当する知事公室以外の部署では、職員のモチベーションが上がりようがありません」(県庁幹部)
3月26日には、最高裁がまたもや辺野古移設問題をめぐり沖縄県の訴えを斥けた。すでに翁長県政時代に、仲井眞元知事による埋め立て承認を取り消したものの、国に違法だと訴えられて最高裁で敗訴。今回は承認を撤回するという県の措置に対する裁判だったが、あらためて敗訴したわけだ。
これには玉城デニー知事の応援団である地元紙の「沖縄タイムス」も、「県は敗訴が確定すれば戦略変更を迫られる」と指摘する(3月21日付記事)。
近く埋め立て予定地にある軟弱地盤を改良するための設計変更が防衛省から県に申請される予定だが、沖縄県はこれを認めない方針だから、またもや国と沖縄県の対立が続くことになる。本土の読者のなかには「またか」と思われる方もいるやもしれない。じつは沖縄でも、多くの県民がこの問題よりも重要な課題があると認識するようになっているのだ。