「エボラ出血熱にも、狂牛病にも、新型インフルエンザにも効く」と宣伝
『サンデー毎日』の提灯記事
阿部氏が主張するナノ銀の効果は、その時々に話題になった流行病とともに拡大していった。阿部氏によって、新型インフルエンザ、BSE(狂牛病)、エボラ出血熱にも「ナノ銀が効く」と宣伝されてきた。
そして福島原発事故の直後から突然、「ナノ銀は放射能を無害化する」という途方もない主張に飛躍する。
こんなデタラメを安易に信じたのが、小沢一郎氏の盟友である平野貞夫氏であり、森ゆうこ氏であった。
毎日新聞系列の週刊誌『サンデー毎日』は二度にわたり、ナノ銀除染を肯定的にとりあげている。その内容ははっきり言えば、小沢氏、森氏を持ち上げる提灯記事だ。
同誌2012年5月6日・13日号は「小沢が進める『放射能浄化』計画の仕掛け人」として森議員を取りあげ、「少しでも除染の可能性があれば試みるべき。しかし、役所は各部署で縦割り。『予算の枠内で』 『決定したことは変えられない』などと既得権益ばかり守ろうとする。それを変えない限り、放射能浄化は遠のくばかりです。今後は自由な立場で働き掛けていきたい」という森氏のコメントを紹介している。これは森氏の国会質問の予告となっている。
森質問後の2013年3月31日号には、「アッキーが視察したナノ銀の除染効果」という記事を掲載している。 アッキーとは、安倍晋三首相の夫人・安倍昭恵さんのことである。昭恵夫人が板橋区ホタル館を訪問し、阿部宣男氏からナノ銀除染の実験を見せられ、「主人(安倍首相)に伝えます」と語ったというのが記事の主旨である。この記事のなかで阿部氏は、「私と昭恵さんの共通の友人が縁で、放射能の除染方法や効果を知りたいということで来館されたのです」と昭恵夫人が視察した経緯を語っているが、その「共通の友人」が平野氏であることは、平野氏が各地の講演会などで自慢気にほのめかしていることから明らかになっている。
森氏はモリカケ問題では、昭恵夫人が「広告塔」の役割を担っていたとして盛んに非難していたが、ナノ銀除染では自身が、平野氏、小沢氏、『サンデー毎日』によって、昭恵夫人とともに広告塔にされ、インチキ除染技術の売り込みをしていたのである。
何度も何度も実験のやり直しを強要
私は、森氏からナノ銀の除染効果についての検証試験を指示されたJAEAの幹部と、実際に試験を担当した大学教授から話を聞く機会があった。
JAEA幹部は、「銀で放射能を低減できるなんてあり得ないことは、科学の基本的な知識があれば、実験などしなくてもすぐにわかることだが、文科副大臣からの指示では断ることはできなかった」と話してくれた。
大学教授は、「ナノ銀で核反応が起きるなんてことは非常識で検証する必要もないが、『放射線量が低減している』といわれ、何か別の原因で低減しているように見えるのだろうと思い試験してみた。試験結果は、ナノ銀と一緒に入れる水分や骨炭が放射線を遮蔽して測定値が減っているに過ぎなかったが、森氏や阿部氏は納得せず、何度も試験のやり直しをさせられた」と証言している。
教授は「最後には『試験に使った測定器が狂っている』と言い出したのですが、私は全国で使用されている放射線測定器の校正の仕事もしています。私が使用している測定器が間違っていたら、全国の測定器が全部間違っていることになってしまいますよ」と、呆れた表情で話してくれた。森氏や阿部氏は自分たちの主張を押し通すために、基準となるモノサシにまで難癖をつけていたのである。