平戸市長室、朝日新聞購読をやめました!|黒田成彦

平戸市長室、朝日新聞購読をやめました!|黒田成彦

市長室での朝日新聞の購読を辞めたのは、2014年9月の朝日新聞の木村伊量社長による謝罪会見が最大の理由でした。


「酔狂」に加え、末尾に笑顔の顔文字が入っているように、お酒の影響もあっての冗談です。ところが、これが大炎上。「不真面目」 「恥さらし」「撤回しろ」などのコメントがつきました。多様な意見を認めるおおらかな世の中がいいと書いたのに、逆に狭量な反応ばかりが寄せられた、というわけです。

朝日新聞に教えたい「都市間交流で大切なこと」

私が市長室での購読を辞めてから3年あまり。朝日新聞は社長交代にまで至ったのですから、「さすがに朝日も変わらざるを得ないだろう」と思っていたのですが、全く変わっていません。そのうちの1つが、自身が種を蒔いた慰安婦問題についてです。

サンフランシスコ市に民間が建てた慰安婦像と碑が寄贈されることになり、姉妹都市である大阪市は寄贈を受け入れないよう要請していました。ところが、サンフランシスコ市がこれを受け入れたため、大阪市が姉妹都市関係を解消すると宣言したのです。すると朝日新聞は2017年11月19日付の社説で、〈ちょっと待ってほしい〉〈市長の一存で断ち切ってよいものではない〉〈冷静さを欠いている〉と大阪市の決定を批判したのです。

たしかに、都市間交流は市にとって非常に重要です。外交は国家間だけで行われるのでなく、姉妹都市間でも行われ、行政側はもちろん、住民同士にも絆が生まれます。歴史のがりを基に学術交流でお互いにいい刺激を受けたり、子供たちを相手の都市に派遣して外国語研修を行ったりするなど、市民にとっても世界に目を啓くとてもいい機会を得られます。

平戸市でも、古くから東アジアとの都市間交流があります。2017年11月30日に台湾の台南市から鄭成功の銅像が平戸市に寄贈され、除幕式が行われました。鄭成功は近松門左衛門作の人形浄瑠璃『国姓爺合戦』のモデルでもある台湾の英雄で、清に滅ぼされようとしている明を擁護し、抵抗運動を続けて台湾に渡った偉人です。

鄭成功は平戸において、父で福建省出身の貿易商だった鄭芝龍と、日本人の母・田川マツの間に生まれました。つまり、台湾と福建省の英雄であると同時に、平戸にも深い縁があるのです。

ところが、私が市長になるまでは台湾との関係は民間交流に留まっていました。長崎県がかなり早い時期から中国・福建省と交流しており、中国の総領事館が置かれているため、反発を恐れたのです。私は長崎の県議会議員の頃から「台湾と公式に交流すべきだ」と言ってきましたが、「できません」 「中国総領事がいるので無理です」の一点張りで、取りつく島もありませんでした。

私は平戸市長になってすぐに台湾に行き、いまや鄭成功を縁に台南市と民間主導の市民交流促進協定を結んでいます。以前、長崎県は中国総領事から「台湾に行くな」 「日中国交を断絶する」 「総領事撤退だ」とまで言われたそうでトラウマになったのでしょうが、実際に台湾に行ってみれば誰も何も言ってこない。8年の在任中にすでに16回も渡台していますが、苦情1つありません。

4年前、鄭成功の生誕の地である平戸市川内町に記念館を作ることになり、これを機会に台南市と公式な友好交流の協定を結ぼうとした際には、さすがに中国総領事から圧力を受けました。そこで、書面上は民間の交流団体の長同士の提携の形でやり過ごしましたが、市民間交流は続いています。台湾の「青天白日旗」が台湾との交流記念行事で掲揚されるのは、県内でも平戸市だけではないでしょうか。

都市間交流は圧力があっても続けるだけの意味がありますが、それは互いの信頼関係があってこそ。せっかく銅像を建てるなら、平戸市と台南市のように、歴史上の縁を後世に伝え、市同士、住民同士の絆を深めるものであるべきです。

ところが、サンフランシスコ市が受け入れた慰安婦像、特にその碑文は「少女を含む数十万の女性が性奴隷として監禁され、大半が死亡した」というもので、これは朝日の誤報をはじめ、誤った情報に基づいた内容です。少なくとも、決して姉妹都市間の友好を深めるものではありません。

朝日も社説で指摘しているように、都市間交流は「人と人」の交流が原点で、何よりもお互いの信頼のうえで成り立っています。誤った情報で相手国の国益が損なわれると知りながら方針を曲げないということになれば、都市間にある友情はどこに立脚するのかという話になる。 「拒否権行使を強く望む」とまで求めた再三の要請を無下にされたのですから、信頼を裏切られたのは大阪市のほうです。姉妹都市提携解消は当然の結末と言っていいでしょう。

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