次世代の戦いマルチドメイン作戦とは何か
マルチドメインタスクフォースとは、2017年にアメリカ陸軍特殊作戦司令部(USASOC)が発表したマルチドメインバトル(Multi-Domain Battle:MDB)と呼ばれる戦闘概念にもとづいた多領域、つまり、陸、海、空、宇宙、サイバーという全戦闘領域を一つの領域として、作戦遂行をする陸軍に新たに設けられた部隊である。
従来の陸、海、空での物理的な攻撃だけでなく、宇宙や電子戦、サイバー攻撃、情報戦なども組み合わせた作戦で、全領域において優位を保つ能力が求められる次世代の戦いと位置づけられている。陸軍は海外の紛争において海軍や海兵隊の支援を受けて上陸していたが、マルチドメインタスクフォースの設置により、陸軍も地上から海軍、海兵隊への支援を行う事ができるようになるのだ。
2018年12月に制定された我が国の防衛大綱でも「宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域については、我が国としての優位性を獲得することが死活的に重要となっており、陸・海・空という従来の区分に依拠した発想から完全に脱却し、すべての領域を横断的に連携させた新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を図っていく必要がある」として、多次元統合防衛力について謳っている。
つまりマルチドメインバトルとは次の戦争での戦い方なのだ。
マルチドメインタスクフォースの一つは日本に配備される可能性が高いとみられる理由として、2018年に行われた日米海上軍事訓練「RIMPAC」が挙げられる。この軍事訓練では、米海軍に加えてマルチドメインタスクフォースが参加している。自衛隊も海上自衛隊のみならず、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊が参加しており、ミサイルの実射訓練を行なっているのだ。
米陸軍太平洋司令(USARPAC)は、アジア太平洋地域の陸軍を指揮している組織で、ハワイ、アラスカ、グアムおよび日本の国土防衛を主な任務としており、約80,000人の兵士がいる。そのUSARPACが現在、マルチドメインタスクフォース部隊の配置について検討しているというのだ。
マルチドメインタスクフォースは、通常、長距離精密射撃砲、次世代戦闘車両、極超音波ミサイル、精密ストライクミサイル、対空ミサイル防衛システム、将来型垂直離着陸機などを装備するとされるが、それらは一箇所に設置されるのではなく、地域全体に配置される予定であるとしており、はじめに電子戦兵器と長距離精密射撃砲を配備する計画だとしている。