16人の船員を殺した? 俄かには信じられない話
2019年11月7日午後3時、韓国統一部長官の金錬鉄は、日本海上で拘束した北朝鮮の男2人を猟奇殺人者だとして板門店から強制送還した、と発表した。
2人は10月下旬、過酷な扱いを受けたために激高してイカ釣り漁船の船長を殺し、それに抗議した残りの乗員15人を殺害して、遺体を全て海に投げ捨てたという。その逃走中だったことが判明したため、韓国統一部は追放措置を取った、というのだ。
しかし、彼らが「16人の船員を殺した」というのは金錬鉄の言葉であり、確認された証拠はどこにもない。
私は北朝鮮で15年間、咸鏡北道の海辺で暮らした。海を少しでも知る者ならば、大半の船乗りたちが性格が荒々しいことくらいはよく知っている。体が丈夫でなければ、海で漁をすることなどできない。そのような男たちが、何の抵抗もせずに銃器を持たない二十代の青年らによって、16人も殺されたというのか。しかも、この小さな木舟のなかで(写真参照)。俄かには信じられない話だ。
強制送還された脱北者たちが乗ってきた長さ15メートルのイカ釣り漁船。