ミツカン「種馬事件」、再び、敗訴|西牟田靖

ミツカン「種馬事件」、再び、敗訴|西牟田靖

2013年、中埜大輔さんは、ミツカンの創業家出身のオーナー経営者である中埜和英会長の次女、聖子さんと結婚、翌年には男の子が誕生した。だが、彼の人生は義父母によって破壊された。生後4日目の子供を義父母の養子に差し出すよう強要されたのに始まり、別居の命令、離婚の強要、親子引き離し(実子誘拐)を目的とした日本への配転、告発報道の取材に応じたことを理由に即日解雇――。まるで中埜一族に「種馬」のように使われ、放り出されたのだ。


日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖 | Hanadaプラス

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「お前! 何者だと思ってるんだ、お前!! この場でサインをしなければ、片道切符で日本の配送センターに飛ばす」「中埜家に日本国憲法は関係ない」。日本が誇る大手食品メーカーが、婿に対してとんでもない人権侵害を行っていた――。2022年8月号に掲載され、大反響を呼んだ記事を特別無料公開!

裁判所も「夫婦仲は良かった」と認めたが

(筆者撮影)

11月1日午後1時、東京高裁424法廷でミツカン控訴審(和英・美和氏に対する損害賠償請求訴訟)の判決が言い渡された。

主文
本件控訴をいずれも棄却する
控訴費用は控訴人の負担とする


相澤哲裁判長が判決を言い渡したとき、中埜大輔さんは、今までに見たことのない怒りの表情を見せた(一審判決の詳細は『ミツカン「種馬事件」 まさかの敗訴』を参照)。

2時間半後に東京高裁内で行われた会見に河合弘之弁護士の姿はなかった。かわりに大輔さんと同席したのは、河合弁護士と同じ、さくら共同法律事務所に所属する野崎智裕弁護士であった。

大輔さんは、野崎弁護士からの紹介を受け、語りはじめた。

「私の実質的な敗訴という内容です。判決からは、私がいちばんの問題とした、親子引き離しの判断は誰の責任なのかというところがすっぽり抜け落ちているんですね。非常に残念でがっかりする判決というふうに言わざるを得ない」

義父母である和英・美和氏が大輔さんと聖子さんに対して高圧的な態度をとっていたことは、裁判所も認めている。それでもなお、和英・美和氏への責任は問わないというのだ。

「今回の判決で、『大輔と元妻の間に愛情は存在した。夫婦仲は良かった』と判断されています。つまり『夫婦仲が良いので、夫婦間の問題はない』ということです。とすると、中埜和英・美和氏が私の家族、親子間を破壊した以外には考えられない。それなのに裁判官は『和英・美和氏の行動は問題ないし、責任も問わない』と判断したんです。被害者(息子)はいるが加害者は存在しないということ。これはめちゃくちゃな判断ですよ」

大輔さんは、自らの事件が、「実子誘拐」という社会問題と同じ状況にあることを指摘した。

「日本は、子供の権利というものを粗末にしていて、諸外国からも非常に非難されています。実子誘拐などと呼ばれていますけれども、片親が子供を連れ去ったときに、別居親は子供に会えなくなってしまう。私も全く同じ状況です。このような被害に遭っている親子は日本にたくさんいる。それらの社会問題も、私の事件の背景には横たわっている――という点もぜひお伝えしたい」

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