金正恩最大のタブー「母は在日朝鮮人」|李英和

金正恩最大のタブー「母は在日朝鮮人」|李英和

「重大な実験」を繰り返すなど挑発行動を活発化させる北朝鮮。実は国内で今もなお金正恩委員長の神格化作業が足踏みを続けていることはあまり知られていない。なぜなのか? そこには金正恩の生母にまつわる「不都合な真実」という決して乗り越えられない絶壁がある。国家機密にまで指定された金正恩体制の「アキレス腱」にして最大のタブー!その真実に迫る。  


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「肝心の金正恩がほとんど登場せず、幼少期の静止画像が数枚だけ」の謎

記録映画では、高英姫の経歴には全く触れていない。高英姫の人物像に関しては、「金正日への忠誠と献身」 「素朴で謙虚な母親」との抽象的表現で押し通した。  

映画は高英姫50歳の誕生祝賀会の場面で最高潮を迎える。2002年6月26日、高英姫が金正日に捧げる自作の詩を朗読する姿と肉声が滔々と流れる。「喜びも栄光、悲しみも栄光、試練も栄光と考えて、将軍様とともに過ごしてきた30年の歳月を顧みながら──」。  

その高英姫が夫の金正日と連れだって、金正日の実母=金正淑の革命史跡地を訪問する様子が映し出される(98年3月)。そこでは、高英姫が「康盤石(金日成の生母)と金正淑の偉大なお母様を模範とした」との解説が付く。要するに、高英姫が二人の衣鉢を継ぐ3代目の「偉大なお母様」だと主張する。  

偉大な将軍様と偉大なお母様の間に生まれた金正恩こそが「偉大な領導者」である──。そう刻印する仕掛けである。ところが、記録映画には肝心の金正恩がほとんど登場しない。幼少期の静止画像がわずかに数枚あるだけだ。

有力な後継候補だった高英姫の長男=金正哲

その理由は2つ考えられる。  

ひとつは、動画を撮り溜めた時期は、金正恩がスイス留学中(1996~2002年)だったこと。金正恩の帰国後、高英姫は乳がんが再発、ほどなく治療のためにフランスに出国していた。  

もうひとつの理由は、動画の撮影時には、高英姫の次男=金正恩ではなく、長男=金正哲が有力な後継候補に擬せられていたこと。したがって、長男の映像を撮り溜めたが、編集段階ではもはや使えなくなった。後継者が長男から次男の金正恩に入れ替わったせいである。実際、本編中に長男の金正哲は影も形もない。まるで金正恩が「ひとり息子」と思わせる作りである。

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