関西電力と森山元助役の深い闇|須田慎一郎

関西電力と森山元助役の深い闇|須田慎一郎

関西電力の経営幹部らが福井県高浜町の森山元助役から3億円を超える金品を受け取っていた問題は、いまなお金品を受け取っていた職員が109人もいたことが報じられるなど、話題となっている。しかしこの問題は部落解放同盟、共産党、そして原発などいくつか伏線と構造を理解しなければ本質が見えてこない。テレビや新聞が報じない、関電と森山元助役の関係、森山元助役の背後に何があるのか──。


国税にとってもタブー

もう一つ押さえておくべきなのは、関西電力にとっては同和問題はタブー中のタブーということです。

すでに問題が解決されているので実名を出すことは避けますが、部落解放同盟のメンバーが社長だった大阪のある会社が、関西電力とトラブルを起こしたことがあります。簡単に言うと、関電の施設を勝手に使って商売をやっていたのです。

関電としては、法律違反をしているし、対価も支払っていないのだから排除しようとするのですが、すぐに解放同盟の一部メンバーが関電にデモをかけたのです。「差別するな」と。もちろん理不尽な言い分ですが、彼らはそういう理屈で動くのです。

結局、その会社は社長が交代したあと、新社長が上場するため過去の”負債”を一掃しようと考え、数百億円を関電に支払って、全面的な解決に至りました。

また、これは関電関係者から直接聞いた話ですが、公道に電柱を立てて電線を通そうとしたら、「誰に断って立てているんだ」と抗議してくる者が出てきて、邪魔をするようなことも頻発したそうです。

そういったトラブルがあちこちで起こるために、その土地の顔役に頼んで解決してもらうことはよくあった。関西電力にとって、同和問題は非常に重要な問題であると同時に、非常にナイーブな存在であったことは間違いないのです。

今回の一件は、もともと金沢国税局が2018年1月に、森山元助役が顧問を務めた建設会社「吉田開発」の税務調査を開始し、高額な使途不明金が見つかったことが始まりで、その後、税法上の時効が切れる7年間分を調べたところ、約3億円もの裏金が森山元助役へと流れていた。さらに反面調査をしたら3億2千万円相当もの金品が関電の会長や社長を含めた幹部20人へと流れていたことがわかった。それを国税がメディアにリークしたことで、大騒ぎとなったわけです。

数十年前までは、国税局にとっても同和絡みの団体あるいは企業はタブーな存在で、納税報告書などはほとんどノーチェックに近いものでした。

朝鮮総連系の企業も同様でしたが、10年以上前に千葉のパチンコ屋が査察に入られて以来、「朝鮮総連系はノーチェック」という悪習が断たれた。

同和系に対しては、同和対策事業特別措置法が1982年に失効したことをもって、タブーではなくなりました。かといって、好きなように手を出せるかというと、それはやはり難しい。ある意味で、国税にとっては同和系の企業や団体は不戴天の敵で、「いつかやってやる」という気持ちを持っていたわけです。つまり、国税にとってもかねてから懸案であり、タブーだった、という線を抑えておく必要があります。

”組織”をうまく利用した

話を森山元助役に戻すと、私の見立てでは、そういった要素を元助役は利用したのでしょう。助役の意にそぐわないことがあった時、あたかも自分のバックに”組織”がいるかのように臭わせる。そうして森山元助役は存在感を増していったのです。

『週刊新潮』(2019年10月17日菊見月増大号)によると、県庁の出先機関である嶺南振興局の幹部だった男性はこう話しています。

「森山さんは、警察だけでなく県の関係先や税務署にもしょっちゅう顔出していました。とにかく腰が軽く馬力がある人との印象です。年一回、県の施設で人権大会と呼ばれる大会が開かれるときは、健康福祉部や県民生活部(当時)などの部長が勢揃いして森山さんの前にズラーッと並ぶんです。そんなとき、”森山さんの目の前でたばこを吸うな”とか”複数でいるときに出すお茶に茶托をつけるのは森山先生だけ”とか、”森山ルール”を確認し合ったりしたものです」

関電にしてみれば、バックに誰がいるのか、本当にいるのかは検証しようがない。しかし、仮にいるのであれば面倒なことになるから、結局、特別扱いをしてしまうのです。

森山元助役は、高浜町に原子力発電施設を作る際に、どの程度、関電の力になっていたのか。『郷土誌青郷』によると、「町長よりも前に出て、原発反対派を抑え込んだ」という記述があります。関電が頼んだのか、それとも暗黙の裡に行われたのかは定かではありませんが、そういった役目を担っていたのは事実でしょう。

地域と電力会社の間にいるフィクサー役は高浜町に限らず、どこの原発地域にもいます。すでに亡くなりましたが、東京在住のあるフィクサーは東京電力、東北電力と通じており、電力会社からマスコミ対策、反対派対策を、阿吽の呼吸で任せられていました。

どうやって電力会社がフィクサーに金を落とすのか。彼の場合は、銀座の高級クラブに勤めている愛人を利用しました。フィクサーは電力会社の担当や自らの取り巻きとそのクラブに行き、高額の支払いのツケを電力会社に回す。そのうち半分は店に、もう半分はフィクサーの事務所に入り、そこからさらに愛人に金が流れる……というシステムになっている。

これはうまい仕組みで、電力会社としては接待交際費ないしは飲食費として使っているので、税務上はクリアできるわけです。

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切っても切れない、高浜町と原発の関係。

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